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ぷらっと沿線紀行

終点からまた始まる 嵐電 北野白梅町駅

2010年2月20日

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写真嵐電北野線の終点、北野白梅町駅。古びた駅舎に「梅電車」が停車した=京都市北区写真梅の名所として知られる北野天満宮。冬でも訪れる観光客の姿がたえない=京都市上京区写真神奈川県出身の舞妓、勝瑠さん(左)。芸の道にあこがれ、京都にやってきた=京都市上京区写真北野天満宮に納められた数万枚の絵馬=京都市上京区写真北野白梅町駅に入る「江ノ電号」=京都市北区地図   フォトギャラリー

 京都市近郊を走る路面電車の京福電鉄。通称「嵐電(らんでん)」。四条大宮と嵐山を結ぶ嵐山本線(7.2キロ)と、本線から分かれた北野線(3.8キロ)がある。

 毎冬、北野線の終点にある北野白梅町駅の改札を多くの受験生が通り抜ける。徒歩5分ほどの所にある北野天満宮(上京区)。菅原道真(すがわらの・みちざね)をまつり、「学問の神」として知られる。この「天神さん」への合格祈願のためだ。

 境内の各所に、神の使いとされる牛の石像がある。受験生たちは願いを込めて頭をなでる。数万枚の絵馬も掛けられている。ピークは1月の初もうで。2月に入ると、お礼のために再び参る人らの姿が目立ち始める。

 「合格しますように」。嵐電沿線に住む小学6年生の木曽櫻子(さくらこ)さん(12)は1月、絵馬にこう書いた。市内の私立中学の受験を控えていた。願いはかなった。「自信はなかったけど、お参りの御利益があったのかな」。2月、家族4人で訪れ、手を合わせた。

 道真は梅をこよなく愛した。約6万6千平方メートルの境内には寒紅梅や冬至梅など約50種、1500本ほどが植えられている。その多くが梅苑(ばいえん)(約1万6千平方メートル)にあり、2月初旬から3月下旬まで公開されている。梅の香が風に乗り、境内を包む。

 京都盆地の厳しい底冷えも徐々に和らぎ始めた。北野白梅町に春が近づいている。

■梅は見守る 大人の階段

 イラストレーターのみうらじゅんさん(52)は、北野白梅町駅の近くで生まれ育った。ボブ・ディランにあこがれる高校生のひと夏を描いた小説「色即ぜねれいしょん」は、自身の体験が下敷きだ。昨年映画化され、北野白梅町駅では、友人との下校シーンが撮影された。同じく昭和40年代の京都が舞台の青春映画「パッチギ!」でもロケに使われた。

    ◇

 現在の駅舎は1958(昭和33)年に建てられた。長さ約30メートルのホームが3面ある。鉄骨造りで、高さ約8メートル。天井から四つの水銀灯がつるされている。

 「京都の街もどんどん変わっていくけど、ひなびたこの駅には今も昭和がある」と、みうらさん。知人を招く時は必ずここから嵐電に乗って案内する。「友達とザリガニを捕っていた時代にタイムスリップできる。ずっと残ってほしい文化財みたいな存在だなあ」

      ◇

 道真の命日にあたる2月25日、北野天満宮では「梅花祭(ばいかさい)」が開かれる。茶会でお点前を披露するのは、京都最古の花街(かがい)「上七軒」の芸妓(げいこ)と舞妓(まいこ)たちだ。一時に比べて減ったが、今も舞妓7人と芸妓21人が花街をもり立てる。

 舞妓の勝瑠(かつる)さんは神奈川県横須賀市の出身。上七軒を舞台にしたドキュメンタリー番組を見て、芸の道に生きる女性にあこがれた。17歳だった。高校を中退し、両親の反対を押し切って京都へ。2006年9月、舞妓らが暮らす置屋で修行を始めた。

 京言葉や日本舞踊のけいこ、家事の手伝いに追われる日々……。最初の友人は、仏教を学ぶため、同じ置屋でホームステイをしていた16歳の米国人留学生の少女だった。故郷を離れて暮らす2人はすぐに意気投合した。同11月に勝瑠さんは少女を誘い、京都を冒険しようと置屋を飛び出した。

 行き先は嵐山。北野白梅町駅から嵐電に乗った。車両は、神奈川を走る江ノ島電鉄と似ていた。懐かしさが胸にこみ上げた。紅葉に染まる嵐山の土産物店で、ピンクのハンカチをおそろいで買った。少女は翌12月に帰国。勝瑠さんは07年2月、舞妓となった。

 「たった1日の出来事ですが、この美しい街で生きていこうと気持ちが固まった。今思うと大人への第一歩でした。ハンカチは、今でもお座敷に持って行くほどの宝物どす」。勝瑠さんはそう言ってほほえんだ。

     ◇

 嵐電は02年から、貸し切り電車を運行している。テーブルが置かれ、飲食は自由だ。昨年6月、立命館大文学部で「京都学」を学ぶゼミ「洛中洛外研究会」が交流会を開いた。学生や地元の人ら約40人が集まり、京都や嵐電の歴史を語り合った。同会代表で3回生の佐々木環さん(22)は今年も交流会を開くつもりだ。

 「これまでほとんど乗ったことがなかった嵐電が、身近な存在になった。後輩たちに良さを伝えていきたい」

鉄ちゃんの聞きかじり〈江ノ島気分味わえる?〉

 嵐電では昨秋から、「江ノ電号」のヘッドマークを付けた車両が1台走っている。車体の色は神奈川県・鎌倉を走る江ノ島電鉄と同じ。クリーム色と明るい緑色のツートンカラーだ。

 昨年10月、嵐電と江ノ電は姉妹提携を結んだ。互いに相手のカラーに塗装した電車を投入した。両社はもともと、古都を走る路面電車▽観光客の利用が多い▽緑色を基調にした車体のデザインが似ている、などの共通点があった。2010年に嵐電が開業100年、江ノ電が全線開通100年を迎えるのを前に、観光PRなどで協力を深めることになった。沿線スタンプラリーやキャラクター商品の共同開発などを進める予定という。

 嵐電にはこのほか、シックな茶色を基調にレトロな装飾を施した「モボ21型」や、八ツ橋メーカーのキャラクターを描いた「夕子号」などユニークな車両がある。

探索コース

 金閣寺や龍安寺、仁和寺など、嵐電北野線沿線には世界遺産に登録された寺院がひしめく。嵐電の1日乗車券(500円)には拝観料1割引き(一部寺院)などの特典も。北野天満宮の梅苑は中学生以上600円、小学生以下300円(茶菓子付き)。上七軒の歌舞練場では3月25日〜4月7日、芸舞妓による「北野をどり」が盛大に開かれる。

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