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ぷらっと沿線紀行

人はみな 旅の途中 神戸高速鉄道 新開地駅

2010年3月13日

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写真夕方ラッシュ時、阪急、阪神、山陽の東西線ホームから、南北線の神戸電鉄へ向かう人たち=神戸市兵庫区写真5色ののぼりが鮮やかな神戸アートビレッジセンターの前を歩く人たち=神戸市兵庫区写真新開地商店街のゲート。チャプリンのシルエットの中を通り抜ける=神戸市兵庫区写真路地に入ると、昭和のレトロな雰囲気が漂う=神戸市兵庫区地図   フォトギャラリー

 神戸高速鉄道・新開地駅(神戸市兵庫区)では、四つの私鉄電車に出会える。

 阪急、阪神、山陽が東西に乗り入れ、南北に走る神戸電鉄の終着駅でもある。神戸高速は自前の車両は持たないが、計7.6キロで複雑な運行を自ら管理している。

 その新開地駅そばにある新開地商店街。1キロにわたり約160店が並ぶ。一角にある「神戸アートビレッジセンター」で1月16、17の両日、演劇が上演された。

 劇団太陽族の「往(い)くも還(かえ)るも」。労働運動が盛んだった1960年ごろと、バブル崩壊後の90年代を交錯させながら、新開地の片隅で懸命に生きる人たちの姿を描く。中心となるのは博多で印刷業に失敗し、故郷の新開地に戻ってきた30代の男。幼なじみが営む古書店のビル屋上にある小さな家屋で、身重の妻と暮らす。

 95年1月17日。阪神大震災が起きる直前の朝、大阪で新しい仕事を得た男は妻と新開地を離れる。「往くも還るもなかや。おれたちはまだ旅の途中や」

 大正・昭和初期、大衆文化が花開いた新開地は「東の浅草、西の新開地」と呼ばれた。その面影は今はない。新たなまちづくりを模索する地元の姿は、どこか男の人生にも重なる。

 「人のぬくもりがここにはある。経済の繁栄だけでまちは語れない……」。「往くも還るも」を作った劇作家の岩崎正裕さん(46)は新開地を舞台に選んだ理由をこう話す。

■そして、幕はまた上がる

 新開地は花街・福原に隣接し、海側には造船所もあった。地方から流入した労働者らが娯楽を求め集まった。林立する劇場は大正期に年間400万人以上を動員。商店街の西側には、1945(昭和20)年の神戸空襲まで劇場や映画館が20軒近く並び、飲食店やスケート場などの遊戯施設も進出し神戸一の繁華街だった。

 空襲でも焼けなかった大劇場「聚楽館(しゅうらくかん)」や演芸場「松竹座」は戦後も気を吐いた。

   ◇

 「流しのアコーディオンとか三味線の人が街角にいてねえ。懐かしいなあ」。商店街にある52年創業の洋食「グリル一平」3代目、山本隆久さん(53)が、往時のにぎわいを振り返る。小学校高学年から店の出前を手伝うようになった。漫才師の楽屋に届けたこともある。「デートするなら新開地。特別な日のための、あこがれの大人のまちでした」

 喜劇王チャールズ・チャプリンも新開地を訪れた。青年将校によるクーデター「二・二六事件」が起きた36年。3月7日の「大阪朝日新聞」夕刊は、その様子を次のように伝えている。

 「山手から湊川新開地、福原遊郭、栄町から再び山手へ、また海岸突堤へと自動車を一度も降りないスピード見物。湊川神社でしばらく車を捨てて参拝……」

 新開地近くの出身で、当時、映画会社に勤めていた映画評論家の故・淀川長治さんはこの時、神戸港の船室でチャプリンと40分間話したという。後に「生涯の大事件でした」と語った。

   ◇

 しかし、57年に神戸市役所が三宮に移転。70年代には2万人の工員が働いた川崎重工の造船所が縮小され、「聚楽館」「松竹座」も閉館。相次ぐ暴力団の抗争事件でイメージも悪化した。4私鉄をつなぐ神戸高速鉄道が68年に開通。交通の利便性は増したが、新開地は通過駅となり、人の流れが変わったとされる。

 99年にできた「新開地まちづくりNPO」は、町のイメージを「3K」から「B面の神戸」に変えようと活動を続ける。

 5月に開く「神戸新開地音楽祭」は今年で10回目を数える。商店街以外にも、路地裏には粋な名店がそっと立つ。そんなスポットを訪ねる「新開地ツアー」は好評で、参加者へのニュースレターは1万通を超す。「三宮より固定経費が安い点に目を付け、あえて新開地に店を開いてくれた人もいる。これから口コミの効果が出てくる」と、まちづくりNPO事務局長の古田篤司さん。

 14日には「湊川公園ガーデニング広場」が開園する。古田さんたちが市に声を掛け、3年がかりで市民が管理する花壇ができた。公募に応じたボランティアの中には神戸市北区や市外から電車で通う人もいる。まちと人をつなぐ新しいきずなになればと、古田さんらは期待する。

(文・織井優佳 写真・西畑志朗)

探索コース

 湊川公園の地下、ミナエン商店街入り口にある洋画中心の名画座「パルシネマしんこうえん」(078・575・7879)は、映画ファンには知られた存在。公園北側には、青空将棋を楽しむおじさんたちが座布団持参で集まる。兵庫区役所を越えてさらに北へ歩くと、安くて新鮮な野菜や魚がいっぱいの「東山商店街」の活気が待っている。

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