【動画】響紀行「百貨店の音楽」
音楽が流れるなか、制服に身を包んだ店内案内の女性が、扉を開けて開店を告げた=大阪市北区のJR大阪三越伊勢丹
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伊勢丹の開店、閉店時の音楽を作曲した平部やよいさん(右)とプロデューサーの日永田広さん。原音はオープンリールのテープ(中央奥)に録音したが、現在はデジタルデータをコンピューターで処理して音楽を作り上げる=東京都渋谷区
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開店前に朝礼を行う店員たち=大阪市北区
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「太陽の広場」
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「わざわざ行ってみたいと思うような店づくりが課題だった」。当時宣伝部の係長で、現在は井筒屋本店(北九州市)の副店長を務める土谷(つちや)与志晴さん(54)は振り返る。
店内にオリジナル曲を流すアイデアはそんな時に生まれた。当時は、どの百貨店もBGMの専門業者から既製の曲を買っていた。ともすると、他店と同じ曲が流れることまであった。
伊勢丹は自社のスポンサー番組に関わっていたフリーの音楽プロデューサー日永田(ひえいだ)広さん(53)に協力を求めた。「音楽も、店を飾るインテリアの一つ。独自性を出せる」。土谷さんはそう考え、平部さんにコンセプトを伝えた。
1989年9月29日。2年半かけた大改装に合わせて、開店曲「愛が目覚める日」と、閉店曲「街が暮れる時」が初めて店内に響いた。「この曲のタイトルを教えて」「作曲者は誰?」。問い合わせが相次いだ。特別に作ったCD千枚をプレゼントしようと、新聞広告で小さく宣伝すると、3万通ものはがきが届いた。
「雨に唄(うた)えば」を流しては従業員に「外は雨」と知らせたり、特定の曲で、売り上げ目標の達成を知らせたりする――。そんな「サイン曲」とは一線を画し、普段は気にもとめられない店内の音楽が表舞台に立った瞬間だった。
普段はJR大阪三越伊勢丹で店内の案内などを担当する海野(かいの)直美さん(30)は今回、開店曲の合間に入るアナウンスを担当した。毎朝10時、開店曲が始まり、自分の声が流れるのを耳にすると、いつも身が引き締まる。新しい客を迎えようとする従業員の心が一つになると実感する。「独自のもてなし」として生まれた試みが今、従業員の心に響く。
(文・田中美保 写真・飯塚晋一)
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