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勝手に関西世界遺産

登録番号162 瓢箪山稲荷神社の辻占

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写真辻占で占う人(右)は道行く人の性別や服装を専門の用紙にしっかり書きとめる=大阪府東大阪市写真辻占のおみくじの一つ、「やきぬき」。火が焼き落とした部分が占いの結果(右下)地図

 生駒山の麓(ふもと)の瓢箪山(ひょうたんやま)稲荷神社(大阪府東大阪市)に、四辻に立って往来をゆく人の言葉を拾い聞き、その内容で占う辻占(つじうら)が今も伝わっている。

 辻占の歴史は古く、かつては夕占(ゆうけ)、如卜(じょぼく)などとも呼ばれ、万葉集にも多く歌われている。「事霊の八十のちまたに夕占問う占正(うらまさ)に告(の)る妹はあひ寄らむ」(言霊のゆきかうちまたで辻占を問うと、占いはまさにあの娘はわたしに寄ってくると告げた)という歌などをみると、辻占で恋の行方を占っているのがわかる。

 「ちまた」とは十字路などの交差点のことで、幾つもの方向へ通じる十字路は異界にも通じていて、死者や霊が通うと信じられていた。瓢箪山稲荷は、今でこそ住宅街に埋もれているが、かつては大阪平野を南北に貫く東高野街道に面し、暗(くらがり)峠を越えて奈良へと抜ける街道にも近い交通の要所であった。「みこの辻」と呼ばれる辻占専用の占場がここに設けられたのも、それだけ「ちまた」の霊力が強大だったからにちがいない。

   ◇

 さっそく占ってみよう。

 まず神前に願い事をお祈りし、おみくじを引く。このみくじには一から三までの数字が書いてあり、私が引いたのは二だった。次いで占場へ行き、二が出た私は2番目に通る通行人を観察する。

 現在の占場は「みこの辻」が商店街にのみ込まれ交通量が多くなりすぎたため、東参道に移されている。占い方も、道行く人の言葉ではなく、性別や年齢、服装、持ち物、乗り物、向かう方角などを参考にする。

 通行人を待っていると、いきなりトラックが通って驚いた。

 こんな場合はどうするかというと、車やバイクは何人乗っていようと、それで一組と考えるそうだ。やがて子供が歩いてきたので、2番目だからあの子かなあ、なんて思っていると、突然バイクがひゅっと通り抜け、あわててそっちを観察した。スピードが速いので観察も大変である。

 なるほど江戸の頃までは各地で盛んだった辻占が、現代ではめっきり見られなくなった理由がわかる。車やバイクが通ったのでは、言葉を聞き取ることができないのだ。

   ◇

 ともあれ、こうして観察した結果を宮司さんに報告し、占っていただいたわけだが、偶然通りがかった人の様子から意味を見いだしていくのは、夢判断にも似て面白い。私としては、当たっているかどうかということより、昔の人は、そこにある状況やその場の空気に、現代人よりもずっとじっくりと向き合っていたんだな、とあらためて感じ入った次第である。

(文・宮田珠己〈エッセイスト〉 写真・立花常雄)


○あなた自身をあぶり出す

 瓢箪山稲荷には、辻占のほかにもユニークな占いがある。「おみくじの辻占」だ。

 山畑阿智彦宮司(70)によると、幕末の頃には参道は多くの旅館が立ち並ぶ盛況ぶりで、「瓢箪山の辻占」は全国に知れ渡っていた。そのため、当時の宮司が「瓢箪山の辻占がほかの所でもできるように」と、おみくじをつくり、各地で「辻占売り」と呼ばれる行商が売ったという。

 現在まで続くそのおみくじは3枚入りだ。一般的なおみくじ以外に「やきぬき」と「あぶりだし」がある。

 やきぬきは、紙に大吉から凶までがぐるりと書かれている。真ん中の「火」と書かれた所に火をつけると、不思議。ヘビがはうように紙を焦がしていく。焼け落ちた部分の吉凶が結果だ。私の占いは、「吉 出世の時がくる」と思いきや、火はそこを通り過ぎ、隣の「末吉 石の上にも三年」が落ちた……。

 あぶりだしは、下から火であぶる。こちらは、「だまされるな 用心 ようじん」が浮かび上がった。(向井大輔)

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