現在位置:
  1. asahi.com
  2. 関西
  3. 関西の交通・旅
  4. 勝手に関西世界遺産
  5. 記事

勝手に関西世界遺産

登録番号172 京都市動物園の観覧車 

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真京都市動物園の観覧車写真京都市動物園の観覧車地図   

 京都と神戸と姫路の動物園にあって、大阪の動物園にないものはなあに?というなぞなぞがあったとする。というか、たった今、思いついた。

 気の早い読者は、さっそく動物園名を縦軸に、動物名を横軸に入れて、ひとマスずつ、○か×かでつぶしていくに違いない。これだけでも、丸一日は楽しめそうな作業だが、答えはブー。問題は「いる」ではなく「ある」なのだから、動物ではない。

 正解は観覧車で、どれもとびきり小さい。私のこどもたちがまだ幼かったころ、せっせと連れて通ったのが神戸の王子動物園、そのかわいらしい観覧車(高さ36メートル)が家の庭にあったらな、とは思わなかったけれど(そんな庭があるわけないもの)、一日中貸し切りにして、それが無理なら回数券を全部使ってでも、エンドレスで乗りたいなと思ったものだ。

   ◇

 もう20年も昔の話だ。そのころすでに、観覧車は大型化する一方だった。神戸ポートアイランド博覧会の観覧車(高さ63.5メートル)が口火を切った。観覧車が高く上ることを目指す乗り物である以上、それは当然だが、観覧車の魅力は、高みに立つというよりは、むしろほんの一瞬しか、その高みに留(とど)まれないことにあるような気がする。もうすぐ頂点だと期待しながら、次の瞬間には下がっていくという儚(はかな)さに、何度もしびれてきた。だから大きさは二の次、むしろ小さなものにこそ観覧車の原点がある。

 そんなことを考えていた頃に出会ったのが、福井優子さんの「観覧車物語」(平凡社)という本で、観覧車の世界の奥深さに恐れ入った。最近、福井さんは「観覧車通信」というブログをも開設、その最新通信によれば、現役最古級の観覧車のうち、2台が京都と姫路の動物園にある。京都は昭和31年設置。姫路は38年と少し遅いが、すでに動いていたものが移されたらしい。

   ◇

 京都のそれは高さ12メートル、直径10メートルと小さく、私の思い出の中の神戸の「かわいらしい観覧車」に比べると、なんと3分の1のサイズである。一方、関西最大級の天保山大観覧車は高さ112.5メートル、直径100メートルという。

 展望では、小は大にかなわないかもしれないが、上ったと思ったらもう下りるという観覧車のもうひとつの醍醐味(だいごみ)で、この古く小さな観覧車を「関西世界遺産」に登録することにした。200円を払って出かける空中散歩は、昭和30年代の貧しかったけれども、身の丈に合った、動物園や遊園地がそれだけで楽しかった時代へと連れて行ってくれる。

(文・木下直之<東大教授> 写真・小笠原圭彦)


○2分半と15分 あなたなら?

 京都市動物園の小さな観覧車は、敷地なかほどに立つ。

 動物園らしくパンダやゾウが描かれたカゴは12だけ。のんびり、ゆらり1周しても、地上に戻るまでたった2分半だ。

 定員4人とはいうものの、大人4人ではかなり窮屈な、こぢんまりしたカゴに揺られながら思った。この密着感はデートに最適。さては、学生がチューしたりするの?

 記者のアホな問いに、遊具を管理する日本科学遊園の岡田哲周さん(33)は「ここで4年勤めてますが見たことない。低いから、外から丸見えですし」と苦笑した。

 大阪・天保山の大観覧車にも行ってみた。8人乗りのカゴが60、およそ15分をかけて1周する。高さ112.5メートルもあり、ちょっと怖い。

 二つの観覧車に乗って、好きな短歌を思い出した。

 〈観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)〉栗木京子

 恋しい人と観覧車。

 高さと彼にどきどきする15分間もいいけれど、ノスタルジックなカゴの中、間近に笑顔を感じる2分半も、捨てがたい。(松尾由紀)

★関西が誇る「お宝」を紹介します。「これぞ関西の世界遺産」という有形無形のお宝の推薦をお待ちします。住所、氏名、電話番号を書き、〒530・8211朝日新聞生活文化グループ「勝手に関西世界遺産」係へ。ファクスは06・6231・9145、メールはdo-kansai@asahi.comで。ご意見、情報などもお寄せ下さい。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内