技、肉体、そしてキャラクター性を競うドラゴンゲートのレスラーたち=20日、京都市上京区のKBSホールで
アイドル歌手のようなダンスつき入場パフォーマンスも=いずれも20日、京都市上京区のKBSホール
プロレスの生中継を、テレビで見かけなくなって、ひさしい。かつて、力道山がスターとして君臨していた時期には、プロレスが国民的な娯楽となっていた。1980年代までは、いわゆるゴールデンタイムに、放映されていたと思う。だが、今日のプロレスは、深夜枠へおしこめられている。国民的な関心はなくなったと、言わざるをえない。
しかし、プロレスそのものは、今でも生きている。ほそぼそとではあるが、たもたれつづけてきた。なかでも、注目したいのは、20世紀末にうかびあがってきた、新しい形のプロレスである。
みちのくプロレスという団体を、ごぞんじだろうか。93年に旗揚げし、東北を中心に興行をおこなってきた。地域密着型のプロレス団体である。テレビの全国ネットで、日本中を相手にしようとはしない。こぢんまりとした地方営業に、活路を見いだした。低迷期にたどりついた延命形態のひとつだと言える。
外国人の悪役レスラーをまねく経費はない。そのため、みちのくプロレスは、関西人を悪者にしたてていく。リングの上で関西弁をまくしたてる関西人レスラーを、正義の東北人がやっつける。そんな演出で、地域のひとびとにうったえかけたのだ。
みちのくプロレスで関西人レスラーの筆頭格だったスペル・デルフィンは、その後大阪プロレスをはじめている。みちのくプロレスは、関西圏にも、地域密着型のプロレスができることをうながしたのである。神戸でも、ドラゴンゲートという団体が、こしらえられるにいたっている。
ただ、ドラゴンゲートは、あまり地方色をうちだしていない。また、いかにもプロレスラー然とした、いかつい男も、あまりリングにはあげてこなかった。
レスラーとしてはやや細身の、わりあい男前の人材を、この団体はそろえている。イケメンぞろいと言えば言葉はすぎるが、比較的ルックス面にも気をつかってきた。すくなくとも、プロレスの団体としては、見ばえがいいほうだと思う。
それが、ちょっとしたホストクラブのような気配も、かもしだすのだろうか。見物客には、若い女性もよく見かける。その比率では、プロレス会場の平均値を、おおきくうわまわろう。これもまた、低迷期を生きぬくてだてのひとつには、ちがいない。
人気も高く、他地方での興行も多くなっている。このごろは、全国区と言ってもいいような様相を呈してきた。神戸から全国へ飛躍した、関西人にはひろく知っておいてほしい団体である。
(文・井上章一〈国際日本文化研究センター勤務〉 写真・伊ケ崎忍)
○ジャニーズ+モー娘。
ドラゴンゲートは、メキシコのプロレス学校がルーツの闘龍門JAPANをベースに04年に設立された。神戸は岡村隆志社長(44)の出身地。北海道から九州まで全国を巡業、年間大会数は200に迫り、観客動員数は約18万人。その6割が女性という。
筋肉系、美男子系、お笑い系など様々なレスラー約30人が、正統派の「タイフーン」、悪役軍団「リアルハザード」、学ランの応援団風「戸澤組」といったユニットで活動する。なんだかジャニーズ事務所みたい。それが刻々と変化する「モーニング娘。」的な演出も加わる。華麗にリングを舞うメキシコ流、ずっしり重量級の昭和型などスタイルは変化に富み、流血がないから家族連れでも安心。ちびっ子へのリング開放、撮影会にお食事会とファンサービスもこまやかだ。この工夫を重ねた筋肉エンターテインメントぶり、日本相撲協会にも見習ってほしい。
今年からアメリカ巡業も始めた。若手外国人レスラーも積極的に招いている。神戸発の国際派プロレス、それがドラゲーだ。(佐藤千晴)
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