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勝手に関西世界遺産

登録番号190 イサム・ノグチの噴水

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写真万博当時、「夢の池」には9基、ほかの二つの池と合わせ計12基の噴水があった写真かつては噴水だったイサム・ノグチのオブジェ「月の世界」=いずれも大阪府吹田市の万博記念公園写真1971年発行の「日本万国博覧会公式記録写真集」から、当時の噴水の様子地図

 8月21日は「噴水の日」なんだそうだ。明治10(1877)年のこの日、東京・上野公園で開幕した勧業博覧会の会場に、日本ではじめて西洋式の噴水が登場したことにちなんでという。

 しかし、ネット上での調べものは便利なようで不便だ。「噴水の日」はいくらでも引っかかるが、見たサイトのいずれも「西洋式」と説明するにとどまり、それがどんな姿だったのかを明らかにしない。

 ともあれ、このことは、噴水が現実の都市にいきなり現れたのではなく、まずは疑似的都市ともいうべき博覧会の会場に作られたことを教えてくれる。およそ100年の後、昭和45(1970)年に大阪で開かれた万国博覧会でも、会場の中心にやっぱり噴水は欠かせなかった。

 大阪万博が千里丘陵に出現させた未来都市は、今も多くのひとびとの脳裏に刻まれているだろう。半年にわたって「民族大移動」が起こった。高校生だった私も、友達の親類の家を頼って泊めてもらい、会場に通った。それがどこの家だったのか、まるで思い出せない。この場を借りて、御礼申し上げる。

 さて、当時のアルバムを開くと、噴水を背景にした1枚の記念写真が収まっていた。それは、噴水というよりは、大地から噴き出す間欠泉に似て、あらゆる方向に激しく水を放っていた。それほどスケールの大きなこの噴水を、いったい何式と呼んだらよいだろうか。

 「西洋式」でも、まして「日本式」でもないこの姿は、実は西洋人でも日本人でもない、あるいはその両者でもある、日本人の父(野口米次郎)とアメリカ人の母との間に生まれた彫刻家イサム・ノグチによってデザインされたものだった。

 イサムは水を上に噴き上げるものだという噴水の常識を逆転、100フィートも下方に噴出し、回転し、しぶきを飛ばし、水に渦を巻かせて、霧のように消えたり再び現れたりすることをたくらんだという。水で大自然を表現したかったからだ。これに鈴木恂建築設計事務所と技術者集団が日本噴水技術推進協議会を組んで応えた。

 万博が終わったあとも、この噴水は水を放っていたとばかり思い込んでいた。管理する日本万国博覧会記念機構の話では、閉幕後はほとんど動かしていないという。

 それはもったいない。とはいえ、稼働させるなら、大量の水とエネルギーと多額の経費が必要で、それこそもったいないという判断がまかり通ってきたのだろう。

 噴水にしてみれば、日本社会のこの価値観が再び逆転する日を静かに待つしかない。

(文・木下直之〈東大教授〉 写真・小笠原圭彦)


○好奇心くすぐる万博記念公園

 70年3月からの半年間に、6421万人もの入場者を集めた日本万国博覧会(大阪万博)。77年生まれの記者は、当時の興奮を知らない。今に残る面影は岡本太郎の「太陽の塔」だけと思っていた。

 ところがどっこい。跡地を利用した万博記念公園には、ぽつぽつ当時の遺物が残る。

 遺産登録されたイサム・ノグチの噴水は、白鳥ボートが浮かぶ「夢の池」の中。水は噴かずとも、池からキノコや箱が生えたようなデザインは目を引く。池の北西には、ノグチのオブジェ「月の世界」。これも別の池の噴水だったが、移設された。

 その南には、広場の隅に鉄パイプの巨大な物体が輝く。万博会場の一部を覆った「大屋根」の骨組みの遺構で、丹下健三がデザインした。そうそうたる面々がかかわっていたんだなぁ、と感服。

 もっと当時の様子を知りたければ、生活誕生館DILIPAの「EXPO’70ホール」へ。映像や資料が見られる。

 懐かしさか、新鮮な驚きか。世代によって反応はわかれるが、どちらも文化の秋に知的好奇心がくすぐられること請け合いだ。(松尾由紀)

★関西が誇る「お宝」を紹介します。「これぞ関西の世界遺産」という有形無形のお宝の推薦をお待ちします。住所、氏名、電話番号を書き、〒530・8211朝日新聞生活文化グループ「勝手に関西世界遺産」係へ。ファクスは06・6231・9145、メールはdo-kansai@asahi.comで。ご意見、情報などもお寄せ下さい。

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