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勝手に関西世界遺産

登録番号192 加西の異形石仏群

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写真墓地に立つ背面に十字が刻まれた地蔵=兵庫県加西市朝妻町写真Ωの字を表現したという説もある石仏=加西市坂元町地図加西市の石仏関連の場所

 昭和47(1972)年、兵庫県加西市野上町の大日寺境内で、背面に十字架が刻まれたお地蔵さんが発見され、ちょっとしたニュースになった。この地域ではそれまで知られていなかった隠れキリシタンの存在が、浮かび上がってきたからだ。

 隠れキリシタンというと、ふつうは九州を思い浮かべるけれど、加西周辺には、16世紀後半の天正年間、明石に高山右近、室津に小西行長、山崎に黒田如水らキリシタン大名が多くいて、キリシタン禁教令の出る前年慶長16(1611)年には姫路藩のキリシタン領民200人が追放されたりするなど、もともと信仰の活発な地域であった。加西に隠れキリシタンがいたとしてもおかしくはない。

 実際、その後も、隠れキリシタンとの関連をうかがわせる石仏は、郷土史家などにより次々と発見され、すでに加西市内だけで150体近くが確認されている。

 ところで、そうやって秘められた歴史が紐解(ひもと)かれてゆく面白さもさることながら、ここで興味深いのは、それら石仏たちの造形である。

 大日寺の背面十字架地蔵が背負う十字架は、誰が見てもそれと断定できるほど堂々たる表現だが、そのほかにも、十字を簡略化したT字や、一文字だけが刻まれているもの、ほかの隠れキリシタンの図像でもよくみられる三日月に乗るものなど、さまざまなタイプが発見されている。

 今回、案内いただいたなかに、右腕から左腕にかけて頭をぐるっと囲うように浮き彫りが施された奇妙な地蔵があった。これは三代将軍家光時代のもので、Ω(オメガ)という文字を表現しているらしい。傍らにはΑ(アルファ)を象(かたど)った地蔵もあり、これらはキリストが「私はΑであり、Ωである」と語った逸話に由来するという。

 他にも、天使の羽根のような表現がある地蔵、ガウンを羽織っているもの、さらに隠れキリシタンと関係があるのかないのか、簡単な顔だけがまるで記号のように石の真ん中に彫られてある首六地蔵など、異形の石仏が市内のあちこちに点在する。まるで石仏ワンダーランドだ。

 加西市の石仏といえば、北条の五百羅漢が有名だが、この五百羅漢にしても、実際は、ペンやノートを持つ神さま、異人にしか見えない像などが多く混じっていて、いったい誰が何の目的で彫ったものか、詳しいことはわかっていないそうだ。

 面白すぎる。こうなったら隠れキリシタンと関係があろうがなかろうが、全部まとめて加西の異形石仏群ということで、勝手に関西世界遺産に登録したい。

(文・宮田珠己〈エッセイスト〉 写真・立花常雄)


○隠れキリシタンいた?

 兵庫県加西市には数多くの石仏があり、全国有数の規模という。なぜ石仏が多いのか? 加西市教委によると、加西は加工しやすい石が多く産出する地域で石工が多かった▽交通の要所で西国三十三所の巡礼道でもあった――などが考えられるという。

 その石仏群の中で注目を浴びているのが、背面に十字が刻まれた地蔵だ。市教委では意匠が珍しいことは認めているものの、隠れキリシタンとの関連については、明確に裏付ける文書などの史料がないため、「学術的には確定できない」という立場だ。一方、地元の有志らでつくる「加西異形石仏研究会」は、関連性を主張する。

 同会顧問で牧師でもある吉田完次さん(83)は30年以上も前から、市内の石仏を徹底的に調査してきた。私財を投じて自宅敷地内に平屋の「加西石像文化センター」を建てるまでの熱の入れようだ。100を超える石仏の形や造られた時期の分析結果、分布地図、写真や関係書籍などが無料で展示されている。

 詳しくは、ホームページへ。(向井大輔)

★関西が誇る「お宝」を紹介します。「これぞ関西の世界遺産」という有形無形のお宝の推薦をお待ちします。住所、氏名、電話番号を書き、〒530・8211朝日新聞生活文化グループ「勝手に関西世界遺産」係へ。ファクスは06・6231・9145、メールはdo-kansai@asahi.comで。ご意見、情報などもお寄せ下さい。

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