現在位置:
  1. asahi.com
  2. 関西
  3. 関西の交通・旅
  4. ますます勝手に関西遺産
  5. 記事

ますます勝手に関西遺産

【電車の中のおしゃべり】オチないの ありえへん

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真話題は血液型占い。「ほんま?」「ちゃうやん」とつっこみ、つっこまれ、盛り上がる=大阪府内、伊藤恵里奈撮影写真「電車の中のおしゃべり」絵・グレゴリ青山写真有川浩さん写真有川浩さんの「阪急電車」

 有川浩さんをひきつけた女子学生たちの会話は、小説「阪急電車」で、再現されている。

 おしゃべりの中心は、高3のえっちゃん。彼氏は、五つ年上、大卒の社会人。でも、「アホの部類」。というのも――。

 シャツのアイロンのかけ方を教えて、と電話があった。タグに書かれている素材を聞くと、

 「糸って書いてある」

 えっちゃんの話に、友達がつっこむ。「偏やろそれはー!」

 糸の横はなんて書いてある? 「月って書いてある」

 つっこみ、再び。「『絹』やそれは――!!」「しかもちっちゃい口が抜けてるやん!」

 有川さんは振り返る。「『糸偏に月』ですぐ『絹』ってわかる女の子たちはすごい!と思いました。関西は周りがきちんと会話にオチをつけてくれる。恐るべき関西人、です」

   ◇

 電車で交わされるおしゃべりに、地域差はあるのだろうか。

 「大阪は会話量が多い。テンポもいい」。全国の9割以上の路線に乗り、鉄道をテーマに撮って、書いてきた札幌市在住のフォトライター矢野直美さん(41)はそう言い切る。

 「関西では、車内のコミュニケーションに人情がある」というのは、鉄道好きの「鉄ちゃん」たちでつくる大阪大学鉄道研究会の大原賢治さん(19)。夜の神戸電鉄で、酔ってうつらうつらしているおっちゃんに、周りのおっちゃんたちが「そのまま折り返したらあかんで〜」と話しかけていたり、阪神電車で、乗り合わせた客が六甲おろしを唱和したり。

 大原さんは、兵庫県で生まれ育った。「僕は、周囲に人がいる電車の中でこそ、『おもろい話しよ』と思ってます。関西の車内には、どこかわきあいあいとお互いを許容する雰囲気があるし、関西人には芸人の血が流れてますから」。有川さんの言った通りだ。

   ◇

 私鉄、JR、地下鉄。関西には数多くの路線がある。「おもろい会話」を聞きたければ、どの電車に乗ればいいのか。

 有川さんと、大阪出身の鉄道ライター土屋武之さん(43)の答えはまったく同じだった。

 「沿線に学校が多くて、学生さんがよく乗っている路線」

 土屋さんによると、かつて車内は「つれもてデパート行こ」という雰囲気のおばちゃんたちが目立っていた。でも、いつしか存在感は薄れ、お笑いブームの中で育った若者の「素の会話」が面白くなってきたという。

 関西以外から来た友達と、にぎやかな電車に乗るとき、土屋さんはこう耳打ちする。

 「大阪名物の一つやから、よく聞いとき〜」(松尾由紀)

■推薦

小説家 有川浩さん

思わず聞き耳 車内は舞台

 移動は徒歩か自転車か車という高知で育ちました。大学進学で来た関西で「すごいな」と思ったのが、電車の中で聞こえてくる会話です。すべてにオチがついている。周りの人に聞かれることを意識してしゃべっているんだろうか?と思うくらい、引き込まれるものがある。電車の中は、いわば人の目にさらされている舞台なんですね。

 10年以上前に阪急今津線で聞いた女子学生たちの話が、中でも印象に残っています。あまりにおもしろかったので、去年1月に出版した小説「阪急電車」で、ほぼそのまま紹介しました。

 すっかりこの電車文化になじんでしまい、みんながしゃべっているのが電車、オチがあるのが電車、と思うようになりました。東京の電車に乗っていて、「昨日、予習大変で〜」「そうだったんだ〜」なんて聞くと、つい「オチは?!」と言いたくなるくらいです。

   ◇

〈略歴〉兵庫県在住。代表作に「図書館戦争」シリーズ。近刊「三匹のおっさん」(文芸春秋)。

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内