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【ブンセンの「アラ!」】意味なし ブレなし 限度なし

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写真ユニークなネーミングを連発してきた橋本譲さん。名付けが文化として定着したのか同社は車にも一台一台、「カメ」や「イカ」など名前をつけている=兵庫県たつの市のブンセン本社、伊藤恵里奈撮影写真「アラ!」のテレビCM=ブンセンのホームページより写真絵・グレゴリ青山

 ♪アラアラ、アラアラ、アラアララ――。「かたつむり」の替え歌で、ひたすら「アラ!」と連呼する1970年代のCMをご記憶のアナタはなかなかの関西人。その製造元は、兵庫県たつの市新宮町のブンセンだ。

   ◇

 のりのつくだ煮の製造を始めたのは50年代初頭。そのころは店頭での量り売りが一般的で、固有の商品名がないと、よそと区別してもらえないのが悩みの種だった。そこで61年、「アラ!」と名付けて売り出した。

 「意味? ないです。音の響きがこたえられんのですわ」

 名付け親で元専務の橋本譲さん(76)は当時入社4年目。大西大三社長(故人)から「文句は一切言わん」と名付けを任された。発想の元は、大好きな萩原朔太郎が詩に使った擬音語(オノマトペ)とか。これぞ言語明瞭(めいりょう)、意味不明。不思議な響きが心にモヤモヤ残る名に、取引先から「なんやそれ」と怒鳴られ、営業マンからは「頼むからやめて」と責められた。

 でも、一任してくれた社長の手前、男橋本、一歩も引けぬ。「この名前は神さんのお告げや」とつっぱねるうち、スーパーでアラ!は大ヒット商品に。

 お陰でネーミングはますます暴走。風呂場で名前を思いつけば、奥方を呼んでメモさせた。

 「ワンデー」(総菜)、「ベラボー」(菓子)、「ニギー」(米飯)、「ヤッキ」(煮豆)、「ポチャ」(つくだ煮)、「パ」(同)など珍名のオンパレード。その数はゆうに500を超す。「特にパ行とカ行の音なんか、人間の生理におうとる気がするなぁ」と橋本さん。総菜に「ペケ」と付けたことも。

   ◇

 さて、アラ!は今も西日本を中心に瓶入りで年約400万個を出荷する主力商品で、大瓶(182グラム)は340円前後。のりが長く、とろり甘口なのと、シイタケ、シソ風味などもあるのが特徴だ。

 だが、桃屋の「江戸むらさき ごはんですよ!」が強い東京ではマイナーな存在。積極営業をかけても、箱根の峠は険しかった。関西から東京へ転勤したファンの中には、通販で取り寄せる人も多いそう。

 神戸市在住の兵庫県立大教授、平田富士男さん(50)は今、アラ!をご近所で買える幸せを実感している。旧建設省に勤めていたが、転勤先で好物のアラ!を買えず度々苦しんだ。何とか実家からパックで送ってもらい、それをアラ!の空き瓶に詰め替えていた。「あの瓶じゃないと雰囲気でないから」

 なんでも、このことをブログに書いたら、大阪の知人から食パンにアラ!を塗って食べているという反響が届いたという。

 あら! そんな味わい方もあったのね。(神田剛)

■推薦

漫才師 メッセンジャー あいはらさん

 わからん名前やけど味ある

 「かたつむり」の替え歌CM知らないって? アラ!

 子どもの頃、ボクはものすごい偏食やったんです。肉の脂も野菜もダメ。白いご飯もそのままでは嫌で、のりのつくだ煮の「アラ!」をのせへんと食べられませんでした。小学3年から一時期、大阪から愛知に移り住んだことがあったんですが、そこでは食卓にアラ!がのぼらんかった。そのせいか、中学生になって大阪に戻ってからは、関西のものや味が一層好きになりました。今でも家の食卓にはもちろんアラ!です。

 ちなみに、子どもの頃はCMソングで当たり前のように聞いてたけど、よう考えたら「アラ!」って、なんの意味やねんって思いますよ。ネーミングが関西らしいっちゅうか、ようわからんナンセンスなところがいいですね。笑いは、オリジナリティーこそが大事なんやと先輩芸人から聞いたことがありますけど、アラ!を作っているブンセンさんはオリジナリティーの塊みたいなもんやと思います。味のあるネーミングでこれからも人の心をつかみ続けて欲しいですねぇ。

 〈略歴〉 69年、大阪府出身。91年に相方の黒田と「メッセンジャー」結成、06年に上方お笑い大賞に輝く。

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