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【「堀井組」ユニークCM】格好つけるな 伝わってナンボ

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写真関西電気保安協会の新CMの撮影現場。タコ足配線をした息子を怒鳴る主人公の父親役は、例によって同協会の現役技術員だ=兵庫県伊丹市、伊藤恵里奈撮影イラスト絵・グレゴリ青山表堀井組の主なCM作品 ※写真をクリックすると拡大します 写真天野祐吉さん

 「お子さんしかったりします?」。兵庫県伊丹市の民家で進むロケ。スタッフが、カメラの前で緊張気味の関西電気保安協会技術員の中嶋孝明さん(49)に話しかけた。「しょっちゅうですわ」。ほどなくカメラは回り始めた。カチンコが響く。

 父親「このどら息子! タコ足配線なんかしやがって!」

 息子「オヤジにタコ足の気持ちがわかるんか!」

 父親「わかるわ! だってオレは…(制服姿に変身)…関西電気保安協会♪………だから」

 わずか15秒のドラマ。11月初旬からオンエアされている関西電気保安協会の新CMだ。

   ◇

 主役はド素人。しょうもないシナリオ。アドリブ大歓迎――。かつては「企業や商品をきっちり素敵に伝えるのがCM」という時代。それらはタブーだった。70〜90年代にその常識を打ち破ったのが電通関西支社にいた堀井博次さん(72)だ。

 1955年に入社し、営業や技術系を担当していたが60年代にCMプランナーに転向。「金がないなら知恵を」「完成度より伝達度」「生活実感」――。その手法に接しながら、ともに仕事をした仲間や後輩らは「堀井組」と言われ、多くの名作を残してきた。その一人で、関西電気保安協会の新作を担当したCMプランナー直川隆久さん(37)は「堀井さんからは『人間は愚かだから愛(いと)おしい。格好つけてもしゃあない』という哲学を教わった」と振り返る。

 堀井組の特徴が顕著に表れた作品の一つが一連のキンチョー(大日本除虫菊)のCMだ。「カ・カ・カ・カ掛布さん」の掛布雅之、特殊メークのたわわな胸を揺らした沢口靖子……。同社宣伝部の小林裕一さん(44)は言う。「CMは番組を見てる人にとっては邪魔もん。見てもうてナンボの世界です」

   ◇

 10年ほど前に退職し、京都で隠居生活中の当人を訪ねた。「当時は冷たい目で見られた」。笑いながら、関西電気保安協会CMの誕生背景を語った。出発点は、知名度が低く訪問時に怪しまれる協会側の悩み。目立つし金もかからないという理由で現役職員を使い、リハーサルが面白ければそれも作品に取り込んだ。そして、覚えてほしい協会名を前面に出す。協会名はリズム無しには読めないほどに知れ渡った。改めて作品をみるとどれもリアルで素朴。一見変化球のようで実は直球だ。

 堀井さんはこんなことをぼやいていた。「最近のテレビ番組はおもんない。番組はCMのためにあんのになあ」。とことんテレビ好き、CM目線。いくつになってもおもろがりたい情熱にただ感服だ。(宮崎園子)

■推薦

コラムニスト 天野祐吉さん

商いの街ならではのノリ

 郷ひろみの「ハエハエカカカ キンチョール」、あれはインパクトがありましたね。関西に天才的なCMプランナーがいると知ったのはその頃です。でも昔からあの会社は、桜井センリが商品を逆さに持って「ルーチョンキ」なんてふざけたCMをやっている。企業の側がそんなノリだから、面白い作品が生まれるんだと思います。

 大阪は商いの街であり、リアリズムの街。甘っちょろいことや調子いいことはインチキだと思ってる。「金をかけてかっこつける東京の鼻をあかしてやろう」っていうエネルギーでCMを作ってるんじゃないですか?

 今やテレビは関西の芸人が席巻していて、関西文化はメジャーになった。脈々と続いてきた堀井さんたちのやり方も、以前のような非主流からだんだん主流になってきましたね。そんな「逆風」の中で、今後どんなユニークなCMがでてくるか。10年前のアホと今のアホは違うわけだから、今のアホぶりをおちょくって、新しい笑いをつくり続けてほしいですね。

 〈略歴〉 1933年、東京生まれ。雑誌「広告批評」の元編集長。朝日新聞でコラム「CM天気図」連載中。

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