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ますます勝手に関西遺産

【指づめ注意】ズバリ危のうございます

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写真「指づめにご注意」のステッカーが張られた京都バス。他の交通機関ではどんどん姿を消しているが、同社では変更の予定はないという=京都市下京区、小玉重隆撮影イラスト絵・グレゴリ青山写真道浦俊彦さん

 北陸人の私が20代だった十ン年前、関西に引っ越して驚いたことの一つが、電車のドアにあった「指づめ注意」の文字。いったい、爪(つめ)の何に注意するの? 「指づめ」が指を挟む意味だと知ったのは、しばらく後のことだ。

   ◇

 この電車の「指づめ」表示が激減している。阪神は1999年、「ゆびづめにご注意!」から「とびらにご注意!」に変えた。南海は現在、「ドアに注意!」、京阪は「ひらくドアにご注意」、近鉄は「ゆびにごちゅうい」。阪急は「注意が行き渡った」として、表示していない。四国だけど「指づめ」表現だった琴平電は「手をはさまないでネ!」、東京では、JR山手線が「すきまに指を入れないで下さい」、東急は「ひらくドアにごちゅういください。」だ。

 ヤクザ映画やVシネマなどで、登場人物が「指つめたらんかい!」とすごむシーンがよく出てくる。どうもこの影響で、乗客に「ヤクザ」「小指を切り落とす」を連想させ、マイナスイメージがあると、表現を変えたらしい。

 「関西の用法の方が本来」と話すのは、神戸山手大の塩濱久雄准教授。「つめる」の元々の意味は、容器などに物を入れていっぱいにすること。長さを短くする、縮めるという意味もある。「空間がなくなる」が「指を挟む」につながる一方、「短くする」が「指を切る」になって、「ある意味特殊な用法が、関西の用法を駆逐した」とする。また、鉄道会社ごとにばらばらな表示を統一しようとする活動もあるようだ。NPO法人品質安全機構の村田一郎理事長は「外国人も乗るので、言葉でなくイラスト表示が良い」。「指づめ」、ますますピンチか。

   ◇

 そんな中、京都市のバス会社「京都バス」は今も、路線バスのドアに「指づめにご注意」のステッカーを張る。「お客様の安全第一、手を挟まれるトラブルが想定されるためご注意しています」と出口幸夫車両課長(63)。さすが、千年の古都! ぜひ「絶滅危惧(きぐ)種」を保護し続けてほしい。

 他にも動物の柵(さく)の前に「かみます」、池の付近で「あぶない」と書いた看板を見かける。短い言葉で危険を端的に伝えるのが関西流、なんて考えながらミナミの百貨店のエスカレーターに乗っていると、さわやかな女性のアナウンスが。「大変危のうございますので……」。東京の知人は「東京ではまず聞かない、危の(アブノ)ーマルな表現」と笑うが、この、よそいきの言い回しが、店の雰囲気にマッチし、何とも心地良い。

 ズバリ直球から、意表をつく変化球まで。注意を促す言葉も多彩なのは、関西ならではのサービス精神、なのかな?(角谷陽子)

■推薦

ことば事情に詳しい読売テレビ報道局副部長 道浦俊彦さん(48)

分かりさすさ評価されていい

 大学時代、関西に来た東京の友人が、電車で「指づめ注意」の表示を見て「うわ、怖いな」と。普通の言葉なのになぜ、と思ったものです。「ドアにご注意」では何に注意するのか定かではない。その点、「指づめ」は危険を具体的に指摘し、かつ、指を挟まれた時の「じ〜ん」という痛みまで想像させる。女子高生が「うち」と言うなど数年前から方言ブーム。関西ならではの「指づめ」も見直されていいのでは?

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