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【点取占い】奇々怪々 愉快なセカイ

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写真「点取占い」はネタも製法も昭和30年代のまま。内職で作っている女性に広げてもらった=大阪府東大阪市、小玉重隆撮影イラスト   イラスト   イラスト   イラスト絵・グレゴリ青山写真都築響一さん

 アナタは知っていただろうか。「点取占(てんとりうらな)い」の存在を。

 説明しよう。それは小さく折りたたまれた、おみくじ風の紙きれのこと。16枚入った袋が駄菓子屋で100円前後で売られている。1枚めくれば、現れるのはめくるめくシュールな世界。そこに書かれた一部を紹介すると……。

 ぶつぶつ文句ばかり言うな ●1点

 犬のごはんをたべた ◎(◎は、半分が黒色で、もう半分が白色の印=左図参照)4点

 かわいそうだから一(いっ)しょに遊んでやるよ ○9点

   ◇

 とまぁ、何の脈絡もなく現れる不条理な短文のオンパレード。一応、●◎○の印で出た点を足し引きする遊びもあるが、んなもんはどーでもよろし。何とも昭和レトロな言い回しが琴線に触れるのだ。

 点取占いは、大阪・松屋町の玩具商、故・宮城隆一さんが昭和10年代に売り出した「点取辻占い」が始まり。戦争で一度途絶えたが、息子の昭三さん(81)が1963(昭和38)年に復刻した。

 「オヤジさんのネタのうち、PTAから苦情がきそうなもんはやめ、新たに私が考えたものを加えたんです」。だが金言……もとい、謹厳実直な父はネタにはうるさく、新作はすべてチェックされた。子どもを失望させぬよう、一つの袋に同じネタが交ざらないよう袋詰めにも細心の注意を払ったとか。そして売れ行き好調となったある日、父は息子に言った。「お前のセンスでええんちゃうか」

   ◇

 かくしてバトンは引き継がれた。とはいえ、「枕元で思いついたもんをメモしてたくらいですわ」と昭三さん。その後、会社は合併を重ね、今は東大阪市の「ワカエ紙工」が製造する。山田博社長(62)によると、中身は昔のまま。印刷した紙を折って重ねて切って袋詰めするのはパートさん。今どきオール手作りの日本製だ。

 点取り占いは、ツッコミ好きが多い大阪よりも東京で売れるらしく、携帯サイトや、コンビニ弁当、菓子や飲料のおまけに使いたいと大手企業からの商談も多い。

 ちなみに占いは672種ある。で、探せばいました。全部集めた人が。徳島県立城南高校教諭の神吉廣純(こうじゅん)さん(49)は、段ボール数箱分を大人買い。1万464枚をめくって完全収集を達成した。ハマったのは、ヘタウマなイラスト。「すごく味がある」。美術の生きた教材として使うと大ウケ。

 ちなみにイラストは、昭和初期の点取辻占い時代から、宮城さん父子が「アマノさん」という絵描きに描いてもらったものだ。

 さて、行数も残りわずかとなったところでオチ代わりに記者も一枚。あ、こんなん出ましたけど。

 ごまかすのはやめなさい ●1点(神田剛)

■推薦

点取占いを雑誌や本で紹介した編集者 都築響一さん

素人の短い文章、強い

 何と言っても魅力はあの短い文章。あえて関西弁ではなく、標準語というのが面白い。素人が編み出す言葉は強い。数年前に脚光を浴びてから、似た商品も色々出たが、プロが作った言葉はどれも面白くなかった。こんなすごいセンスのものが、よく何十年も生き延びてきたと思う。僕も周囲も子どもの頃は存在を知らなかったが、今、買っているのは大人なんじゃないですか。

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