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ますます勝手に関西遺産

【小阪城】屋根の上 苦しゅうない

2011年3月2日

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写真:天守閣前に立ち、太閤さん気分でご満悦の磯野健一さん=中里友紀撮影拡大天守閣前に立ち、太閤さん気分でご満悦の磯野健一さん=中里友紀撮影

写真:小阪城の1階大広間。奥の壁に千畳敷の間が描かれている拡大小阪城の1階大広間。奥の壁に千畳敷の間が描かれている

写真:2階の富士の間。4枚のベニヤ板に城主が描いた見事な富士山拡大2階の富士の間。4枚のベニヤ板に城主が描いた見事な富士山

写真:金色の折り紙を300枚貼った「黄金の茶室」拡大金色の折り紙を300枚貼った「黄金の茶室」

写真:絵・グレゴリ青山拡大絵・グレゴリ青山

写真:難波利三さん拡大難波利三さん

 愛すべき“河内のオッサン”がたくさんいそうな東大阪市小阪。近鉄河内小阪駅前の商店街の一角に、名だたる城がある。5層の天守閣がそびえる「小阪城」だ。

 ふと見ると、城の下で「イソノ理容」の看板とサインポールがクルクル。そう、ここは散髪屋。店舗兼自宅の上にある城なのだ。

 店から顔を見せた磯野健一さん(74)が「いらっしゃい。裏門に回ってや」。裏の玄関を入ると、ちょんまげ頭に上下(かみしも)姿のニセ太閤(たいこう)(磯野さん)が。この人、近江の浅井家家老、磯野員昌(かずまさ)という家柄の末裔(まつえい)。員昌は信長の妹・市を浅井長政と結びつけた。長政が信長に反旗を翻して敗れたとき、江(ごう)たち三姉妹を救出したのは秀吉ではなく、実は員昌だったとか。

 「ささっ、上がられよ」と勧められ、靴を脱ぐと、厳かに御簾(みす)が下がり、はるかに広がる千畳敷の大広間……。「あー、それはわしが書院風に壁に描いた絵じゃ」と太閤さん。奥の庭園には轟々(ごうごう)と流れる瀑布(ばくふ)と思いきや、白ペンキで岩に描いた滝? ふすま絵の隆々たる松も自身で描き、ふすまの装飾金具は釘とドライバーでブリキの薬箱を再利用した。

 築城が始まったのは30年以上前。子どものころから物作りと、城郭などの伝統建築が無性に好きだったという太閤さん。戦前の民家がひしめく小阪地区で建て替えが増え、廃材が出るたびに店の改造にと譲り受けては屋根裏にこさえた物置に詰め込んだ。物置が不細工に見えないようにブリキやベニヤ板で櫓(やぐら)風に飾り、「どうせなら城にしてしまおう」と、散髪客が途絶える合間に工事を重ね、屋根の上に3層の天守閣が完成した。ちなみに中は空洞だ。これをジャッキで持ち上げ、屋根と天守閣の間に2層分を加え、天守閣はついに5層になった。

 自宅の2階には巨大な富士山を描いた圧巻の「富士の間」。1枚400円のベニヤ板を4枚並べ、100円のポスターカラーで1週間かけて描き上げた。「絵はボロ隠し。日本一小さな城に、日本一大きな富士山ですわッハッハ」

 3階にはまばゆいばかりの黄金の茶室。元は天井裏らしい。金箔(きんぱく)に見える壁はベニヤ板に金の色紙300枚を貼り、茶釜も水指(みずさし)も黄金色。改造に熱中していると奥さんは「そんなんしてるから店が暇になんねん!」。でも、そんな奥さんが近くで経営するエステ店も、太閤さんが欧風に仕立てた。

 トタン板とブリキにコールタールを塗って仕上げた天守閣。総工費は約5万円だ。最近、天守閣の横に、3層の小天守閣を増築した。「廃材も使いきったし、もうええかな」。笑顔がはじける太閤さんだ。(大脇和明)

 ■推薦

 直木賞作家・なにわ大賞選考委員長 難波利三さん(74)

 あっぱれ いちびり精神

 小阪城は「大阪一のいちびり(街のリーダーシップをとれる人)」を選ぶ2009年の「なにわ大賞」特別賞(あっぱれ賞)なんです。殺伐とした世の中に、一服の清涼剤と言っていい街のシンボル。しょうもないと思えることを一生懸命に創意工夫を重ねて造る。ちょっと文化財とは言い難いけど、クスッと笑いを取れる、周囲を明るくしてくれる。金もうけではなく、大阪人ならではの、人生を楽しむ“いちびり”精神そのものです。

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