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ますます勝手に関西遺産

【京大・折田先生像】我こそ自由の体現者

2012年3月1日

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写真:屋内に展示されている今現在の折田先生の胸像=竹花徹朗撮影拡大屋内に展示されている今現在の折田先生の胸像=竹花徹朗撮影

写真:ヤキソバン(94年)=折田先生を讃える会提供拡大ヤキソバン(94年)=折田先生を讃える会提供

写真:太陽の塔(96年)=折田先生を讃える会提供拡大太陽の塔(96年)=折田先生を讃える会提供

写真:ナウシカ(2002年)。折田先生像が撤去された後のハリボテ像=折田先生を讃える会提供拡大ナウシカ(2002年)。折田先生像が撤去された後のハリボテ像=折田先生を讃える会提供

写真:てんどんまん(2008年)=折田先生を讃える会提供拡大てんどんまん(2008年)=折田先生を讃える会提供

イラスト:絵・グレゴリ青山拡大絵・グレゴリ青山

写真:折田泰宏弁護士拡大折田泰宏弁護士

 「自由」の話をしよう。

 ノーベル賞受賞者が輩出する京都大の「自由の学風」。その礎を築いた人物像に落書きし、パロディー化する行為は、自由か、甘えか。

 像は、折田彦市(1849〜1920)。薩摩に生まれ、米プリンストン大に留学、キリスト教の洗礼を受けた。帰国後、旧制三高(現・京大)などの校長を30年間務めた。

 生徒をさん付けで呼び、一人一人校長室で将来を聞く。「放任でなく見守り」の人格重視の姿勢が、京大流「自由」の源流となる。三高同窓会は40年、胸像で偉業を顕彰した。

 が、時代はくだり、胸像は権威の象徴と化す。大賢者やヘルメットレーニンに変装させられ、工事用赤コーンやハトが頭に乗った。

 過激さが一線を越えたと目されているのが、94年のヤキソバンだ。体は赤と黄、顔が肌色で、頭に焼きそばの容器。セーラームーン、太陽の塔、ウルトラマンが後に続き、同窓会はカンカン。当局は97年「いたずらにしても限度がある」「批判精神があれば議論の余地があるが、メッセージが感じられない」と像を台座ごと撤去した。

 だが、人間の創作活動は無限だ。

 02年、折田先生像と書かれた台座にナウシカが乗り、王蟲(おうむ)もいた。驚いたのが、京大放射性同位元素総合センターの角山雄一助教(43)だ。

 本物はない。制作者が名乗り出ることも、ない。なのに、この情熱。「変なことが起きている」。そう感じ、「折田先生を讃(たた)える会」というサイトを作ったら、学内外から写真や情報が寄せられた。別に「前略 折田彦市先生」というサイトも作り、折田の業績を紹介し始めた。

 ハリボテは、その後も精巧になっていく。ゴルゴ13、スッパマン、永沢君と来て、08年のてんどんまんで頂点を極める。「アンパンマン」の著作権を持つ企業が「撤去要求はしないが、イメージを損なわないように」と京大に言ってきたのだ。

 秀逸なのは、この要請を受け、「京大高等教育研究開発推進機構」がホームページに掲げた見解だ。

 「風物詩として見守っています」と優しく語りかけ、ハリボテが毎年何者かに壊されることを「創作物を壊す行為は下劣で野蛮」と非難。「今年は、無事折田先生像が役目を全うされることを望んでいます」と続ける。え、先生像? ゴルゴもてんどんまんも、なの?

 それに、「役目」って?

 毎年、ハリボテが建立されるのは入試日。今年は25日だ。「それで折田氏に興味を持てば、自由の重みが分かる」

 そう話す角山助教を訪ねるボランティア志願の学生が、3・11後に増えた。放射線を学ぶためだ。「みな自分の意思で来る。自由だからこそだ。自由には時代にあった表現がある。それができる子がいるうちは日本は大丈夫」

 本物は、学内の三高記念館設置準備室で展示中だ。雨露をしのげる場で、自由を問い続ける。(中塚久美子)

    ◇

■推薦

折田彦市のひ孫・折田泰宏弁護士(67)

一族、怒っていません

 「てんどんまん」は生で見ました。折田一族全員、落書きや現状を知っています。誰も怒っていません。ここまで続けば文化。大学が微妙な形で許容しているのが、自由な気風の伝統でいい。折田がつくった文化だと思います。風刺やユーモアを大事にして欲しい。私は京都・市民・オンブズパースン委員会の共同代表をしています。権威に抵抗するところに関心がある。折田が残した気風とつながっています。

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