現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 関西
  3. 関西の交通・旅
  4. ますます勝手に関西遺産
  5. 記事

ますます勝手に関西遺産

【喫茶店「マヅラ」】夢幻の宇宙へ ようこそ

2012年4月26日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:非日常的な空間をイメージした喫茶店「マヅラ」。店主の劉盛森さん(中央)が明るい声で客をもてなす=大阪市北区、池田良撮影拡大非日常的な空間をイメージした喫茶店「マヅラ」。店主の劉盛森さん(中央)が明るい声で客をもてなす=大阪市北区、池田良撮影

イラスト:絵・グレゴリ青山拡大絵・グレゴリ青山

写真:劇団「大人計画」の俳優・平岩紙さん拡大劇団「大人計画」の俳優・平岩紙さん

 その店に初めて足を踏み入れたときの衝撃は忘れられない。

 丸いゆったりしたイスに腰を下ろす。見上げれば、月のクレーターと見まごうばかりの凸凹の天井、きらめく星のようにつり下がる無数の電球、壁面には光り輝く未来都市を思わせるナゾの模様……。そこかしこに設けた鏡張りの壁や柱に乱反射し、無限の広がりを見せる。

 何なんだ、ここは!?

 「ユートピア、こしらえましてん」

 大きなメガネに蝶(ちょう)ネクタイの劉盛森(りゅう・せいしん)さん(91)がニカッと笑う。大阪駅前第一ビルの地下1階、喫茶店「マヅラ」の社長は「人生、芝居のごとし」と言う演劇好き。店内を舞台に見立て宇宙をイメージした空間を創りだした。

 「どうでっか。(オペラのアリア)『星は光りぬ』が聞こえてきそうでっしゃろ?」「仕事のことは一切忘れて、ひとときの夢を見てもらいたいんですわ」。パソコンで仕事するのは、ここでは御法度だ。

 台湾出身。1941年に単身大阪にやって来た。戦後、大阪駅前の闇市の一角に15坪ほどの喫茶店を開いた。復員兵を元気づけようと、ウインナワルツのレコードを流した。大阪万博開催の70年に駅前ビルが完成して引っ越した。店の広さは100坪にグレードアップ。内装は当時から変わっていない。

 「お客さんに楽しんでもらうのが一番、従業員を養うことが二番、もうけは三番目」。コーヒーは16年前から250円のまま。社長も現役バリバリのまんま。「しゃっせ!」(いらっしゃいませ)。店頭で威勢のいい声を上げる。

 ちなみに、店名の由来は? 尋ねると、老翁は顔を赤らめた。

 19歳のとき、南海のインドネシア・マドゥラ島を旅した。夕暮れに宿近くの砂浜でひとりギターを弾いていると、宿で働く若く美しい女性がそばに寄って来て、うっとり耳を傾けている。思わず「お店を開くときは、君を思い出して島の名前を屋号にするよ」と約束したのだった。

 あれから70年余。「ロマンですわ」。遠い目をしてつぶやいた。

 1日平均600人の客の中に、関西の外からやって来る人が急増している。摩訶不思議(まかふしぎ)な異空間がネットや雑誌で取り上げられ、いまや赤丸急上昇の店だ。

 東京から出張で来阪した会社員の島田明さん(48)は、仕事帰りに寄って来た。「期待以上の、すごい空間でした。こんな店、東京にはもうない」と目を輝かせた。

 厳しい現実に四六時中向き合っていては、身がもたない。入園料250円のユートピアに、全国から人が吸い寄せられる。(向井大輔)

    ◇

メモ 大阪市北区梅田1の3。営業時間は午前9時〜午後11時(土曜は同6時)。日曜・祝日は休み。「味と量と器で勝負する」という料理は500円前後。

    ◇

■推薦

女優 平岩紙さん(32)

ギア外せる心地よさ

 私が高校生のとき、姉が店でバイトしていたので学校帰りによく寄りました。今でも大阪に帰ったときは姉夫婦と一緒におじゃましています。みんなくつろいで、ギア一個はずしている感じが何ともいえない。「あー帰ってきたなぁ」って。心地いい場所です。戦後まもなくから長くお店を維持してきたのは、たいへんなことだと思います。勝手ですが「これからもお願いします!」という感じです。

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

郊外へと膨張してきた「東京」が収縮期に入った――東京に何が起きているのか。

シングル女性3人に1人が「貧困層」。富裕女子との差はいったい、何なのか。

お掃除はルンバにお任せ。あなたに代わって自動でお部屋をキレイにしてくれるロボット掃除機です

世界のあらゆる記録を数多く収めた決定本「ギネス世界記録」

名店からおでんや串カツのお店まで、関西の多様な食文化を反映したガイド本


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介