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ますます勝手に関西遺産

【桜谷軽便鉄道】小さな列車に大きな夢

2012年7月5日

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写真:住宅地を見下ろす高台をコトコト走る桜谷軽便鉄道。訪れた人は、老いも若きもニッコリ。のんびりした時間が流れる=大阪府豊能町、滝沢美穂子撮影拡大住宅地を見下ろす高台をコトコト走る桜谷軽便鉄道。訪れた人は、老いも若きもニッコリ。のんびりした時間が流れる=大阪府豊能町、滝沢美穂子撮影

イラスト:絵・グレゴリ青山拡大絵・グレゴリ青山

写真:近藤光史さん拡大近藤光史さん

 おお、これぞ鉄ちゃんの、鉄ちゃんによる、鉄ちゃんのための、鉄の……いや、夢のパラダイス。

 大阪府豊能町の住宅地に、個人が線路を敷いて運行する鉄道がある。その名は「桜谷軽便鉄道(さくらだにけいべんてつどう)」。二つの駅を結ぶ総延長150メートルの15インチゲージ鉄道だ。

 15インチゲージって何だって? 説明しよう。それは2本のレールの間隔が15インチ(約38センチ)の鉄道のことだ。JRの在来線が3フィート6インチ(約107センチ)なので、相当なミニサイズではある。とはいえ、大人も入れる箱形の車両で、英国では実際に営業している路線もあるとか。イベント会場なんかでまたがって乗るミニSLとは違うのだよ。

 ここをコツコツ造ったのは、かつて半導体関連の会社を共同経営していた持元節夫(もちもと・せつお)さん(84)。子どもの頃から鉄道模型を自作してきたが、1990年代半ば、大阪で偶然ホンマもんの鉄道用レールを扱う会社を見つけた。これがコトの発端。聞けば5メートル半ほどのレールが1本7千円ほど、と言うではないか。「安いっ、買った!」

 さっそく自宅の庭に線路を敷き、最初は手押しのトロッコを走らせた。が、人間それでおさまらない。ベニヤ板で車体を製作、それをクルマのバッテリーで動かし、やがて線路は自宅をぐるり1周し、ついには架線を張りパンタグラフで電気を集めて走るようになった。

 こうして電車はスピードアップ、持元さんはヒートアップのノンストップ状態。自宅には見物人がどっと訪れ、さすがにご近所の目を意識せざるを得なくなってしまった。

 んなわけで、自宅近くに約300坪の土地を買い、2001年に設備一式を移したのが、現在の桜谷軽便鉄道。毎月第1日曜は参加無料の運転会を開き、近郷近在の家族連れが、来た見た乗ったと盛り上がる。

 運転会を手伝うスタッフで目立つのは子どもの姿。何度も通って「免許」を受けた少年運転士も。前岨天満(まえそわ・てんま)運転士(11)は小学6年生。1年生の時からほぼ毎月、三重県四日市市から両親と通うハマりっぷりだ。

 運転会で電車に続いて登場するのは手製の蒸気機関車。蒸気をシューシューはき出してホームに入線すれば、「列車が参ります。お下がりください」と少年駅員がアナウンス。小さな子がSLに近づくと「熱いから触らんといてなー」と目配りも忘れない。SLも熱いけど、熱いのはスタッフの皆さんやがな。

 それをやさしく見守る持元さん。自ら築いた鉄道王国の鉄血宰相、ここにあり。山越え谷越え、世代を超えて。線路は続くよどこまでも。(神田剛)

    ◇

メモ 軽便鉄道は明治期に地方で多く誕生。三重の三岐(さんぎ)鉄道や近鉄内部(うつべ)線、八王子(はちおうじ)線で幅約76センチの路線が現役。桜谷軽便鉄道サイトはhttp://www.nakanoke.com/sakuradani/

■推薦

ラジオパーソナリティー 近藤光史さん(64)

タヒチ走らせたかった

 子どもの頃、岡山で乗った軽便鉄道が懐かしくて、その風景を自宅の鉄道模型で再現しました。でも、実際に乗ることのできる桜谷軽便鉄道はすごい。僕も運転させてもらいましたが、大人も子どもも集まる人みんなが生き生きして素晴らしい。実はタヒチに住んでいた十数年前、現地で軽便鉄道を走らせようと観光大臣に提案したんですが、実現しなかったんです。ホンマ、うらやましい。

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