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ますます勝手に関西遺産

【カタヌキ】失敗ばかりじゃカタナシ!

2012年9月13日

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写真:夏祭りでカタヌキに夢中になる子どもたち=大阪市西成区の橘小学校、伊藤菜々子撮影拡大夏祭りでカタヌキに夢中になる子どもたち=大阪市西成区の橘小学校、伊藤菜々子撮影

写真:絵・グレゴリ青山拡大絵・グレゴリ青山

写真:西上雅章・通天閣観光社長拡大西上雅章・通天閣観光社長

 「わっ。これ、めっちゃ難しい」

 「あーっ、やってもうた」

 猛暑の下、ベニヤ板のテーブルを囲んで小さな板菓子を突っつく子どもたちの声がかまびすしい。

 8月、大阪市西成区橘小学校の夏祭り会場は金魚すくいやクレープ、かき氷など十数の出し物でにぎわった。とりわけ人気を集めたのが「カタヌキ」だ。

 中年以上の方なら、このことばを聞くだけで胸キュンだろう。昭和30〜40年代、祭りで誰もが夢中になった型抜き菓子のあの遊びが、ここでは今も現役で活躍中だ。それもそのはず。同じ西成に、会社いわく「おそらく国内唯一」という型抜き菓子メーカー「ハシモト」があるのだ。

 縦35ミリ、横25ミリ。板菓子の表に彫られた花や動物、串だんごなどの型を、針や画びょうを使って切り離す。1カ所も割らずきれいに抜き取れば景品や賞金がもらえる。これが難しい。手先が器用でも、平常心を失えばとたんにヒビが入る。「もう1回」「最後にもう1回」と、果てしなく挑むことになる。

 ハシモト2代目の橋本嘉義(よしのり)さん(68)によると、同社はもともと、紙芝居屋が子どもに売る1個10円のアメ玉を作っていた。だが昭和32(1957)年、カタヌキが東京ではやっているのを知り、先代が「アメより売れるかも」と飛びついた。

 作り方がわからず、独学で原材料が砂糖とジャガイモのでんぷんであることを突き止め、量産態勢に入った。ところが同じころ、テレビの登場で、卸し先としてあてにしていた紙芝居屋が次々に廃業。生き残りをかけて露天商に売り込んだところ反響を呼び、祭りの花になった。

 時は移り、デジタルゲーム全盛の21世紀。カタヌキのある子どもの風景はセピア色に化し、同業者も退場。気がつけば手がけるのはハシモトだけになっていた。

 「大手が参入するほどでもないし、零細だと後継者がいなくて廃業するんよ」と橋本さん。しかしカタヌキを絶滅から救うため、ハシモトは2年前、3代目の健司さん(30)が後を継いだ。

 大阪ではほとんど見かけなくなったカタヌキだが、今も北海道から九州まで、祭りのあるところ露天商から注文が舞い込む。人気漫画「ハチミツとクローバー」にも登場。有名ゲーム会社からキャラクターのカタヌキ製作の注文が入るなど、まだまだ侮れない力を保っている。

 かつては「食べてもおいしくない」と言われたが、「今はおいしいラムネ味ですよ」と橋本さん。昭和の香り漂う遊びを平成の世に残そうと、改良を重ねつつ奮闘している。(大脇和明)

    ◇

メモ 1箱100枚入りの購入はナックトイズ(http://www.nak-toys.com/index.html)へ。7枚入り「ザ★かたぬき」は「ドン・キホーテ道頓堀店」などで販売。

■推薦

通天閣観光社長・西上雅章さん(62)

「打率」は2割8分

 僕は紙芝居世代。子供の頃はほとんど毎夕、近所の紙芝居屋のカタヌキをやるのが楽しみでした。10円玉1個でカタヌキ1回分買(こ)うて、紙芝居を3作品見せてもらえた。動物や花、車とかの絵をパキパキって指で削りながら抜いていく。でも上手にできん。打率で言うと2割8分くらいかな。通天閣も100年だけど、記念イベントにカタヌキをやるというのも、おもろそうですね。

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