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魅知との遭遇

(72)冬の夏祭り 高知県赤岡市

冷やい現世 開き直らにゃ

[新聞掲載]2008年12月12日

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写真路上に置かれたこたつ。座ってみると意外になごむ=6日、赤岡町の横町商店街

 ♪冬はご存じ「冬の夏祭り」/ええ年こいた大人が遊んでます♪

 通りで女性が歌い、踊っている。替え歌「赤岡ブギウギ」。字余りの歌詞に笑いがはじける。

 高知県香南市赤岡町。この小さな港町の4月の「どろめ祭り」は、この欄でも紹介済み。歌にも「春の祭りは『どろめ祭り』/一升酒何秒で飲むかを競う祭り」とある。でも、赤岡の「魅知」はこれだけではない。何と真冬の12月に「夏祭り」があり、口コミで今では県内外から何千人も集まる。今年で14回目。南国の高知も、やはり冬は「冷(ひ)やい」のに。

 舞台は「横町商店街」。約200メートルのさびれた通りに100を超す出店が所狭しと並ぶ。テキ屋ではない。第1回からテントを出す「インド人が作った究極のカレー」の主人は、料理好きの地元のJA職員(43)。オレンジ色のターバン姿で「インドカレーやないよ。インドのかっこうして売りゆうカレー」とおどける。「作家通り」と名づけられた一角では、隣の香美市に住む竹細工職人(55)が持ち込んだかまどでパンを焼いている。いつもは自分のためだが、年に1度お客のために焼いて8年目という。「毎年、店が増え、客も増えてきた」

 元サラリーマンが皿回しを披露し、悪代官などに仮装した人が行き交う。とりわけ奇妙な光景は、恒例「路上ごたつ」。通りの真ん中にこたつが置かれ、寒空の下、親子連れや仲間同士が買い込んできた食べ物などを囲んでいる。しかし電気コードはどこにもつながっていないのだ。郷土料理のツガニ汁を食べていた年配の女性は「今年で3回目。いつ来ても楽しい」と上気した表情。このノリのよさは一体何なんだ?

 なぞの鍵を握る店が、商店街の中にあった。物の再生と町の再生を一つに結ぶリサイクル雑貨店「おっこう屋」。この祭りがきっかけで5年前に生まれた。300人近い会員から不用品を預かり、再生して並べている。店で働く間城(ましろ)紋江(あやえ)さん(55)が、祭りの誕生に一役買った。

 実は赤岡には、先の「ブギウギ」で「ろうそくの明かりでびょうぶ絵見る祭り」と歌われる夏の「絵金祭り」もある。幕末土佐の町絵師・金蔵が描いた極彩色の芝居絵屏風(びょうぶ)が軒先に並ぶ。この絵金祭りに来た一人の学生が言った「一緒に何かやりたい」の言葉に、間城さんの口をついて出たのが「冬の夏祭り、どう?」。大勢でこれを寄ってたかって肉付けして始まったのが、冬の夏祭り。「みんなが自分の祭りだと思ってるんです。やっている人が楽しんでないと、来た人に伝わらない」と間城さんはいう。

 2日目の夜、祭りが終わり、町は再び静まりかえった。折々の祭りに夢中になれるパワーは、間城さんによれば「どん底からの開き直り」。漁業と交易で栄えた時代も、遠い記憶。でも、間城さんは「私ね、このしんみりとした赤岡が大好き」とつぶやく。「次はふだんの赤岡に来て下さいね。絶対にね」。赤岡は「神祭」ならぬ「人祭」で人を引きつける。(文・釘田寿一 写真・矢木隆晴)

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