12日に公開された超伝導自動車。ガソリンエンジンの代わりに超伝導モーターを搭載している=大阪市
二酸化炭素を出さず環境にやさしい電気自動車の研究開発が盛んだ。電線メーカーの住友電気工業は、究極の「エコカー」の可能性を秘めた「超伝導」自動車を世界で初めて試作した。一定の温度に冷やすと電気抵抗がなくなって無駄なく電気を流せる、同社得意の技術を活用した車だ。(堀田浩一)
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住友電工の大阪製作所で開かれた走行会。何の変哲もない普通乗用車の後部座席に乗り込むと、エンジン音もなくスーッと動き出した。
「アクセルを踏むだけで変速ギアはなし。ゴーカートに乗っているような感じでしょう」。運転する同社の電力・エネルギー研究所の新里剛さんが説明してくれた。
動力源は、同社が開発した超伝導モーター。最高時速は85キロで、時速30キロなら連続2時間の走行が可能だ。特徴はモーターの回転効率のよさ。従来の電気自動車用のモーターはモーター内のコイルに銅線を巻き付けているが、銅線には電気抵抗があり、モーターの回転効率を落とす欠点があった。
一方、超伝導モーターは、複数の金属などを焼き固めたセラミックス系の線材を使う。零下196度まで冷やすと電気抵抗がほとんどなくなり、同じ断面積の銅線に比べ200倍もの電気を流せる。モーターの小型化が可能となって、「燃費」も上がる。同じ電気の量なら、走行距離は13%程度延びる。
この線材開発に二十数年前から取り組み、世界で先端を走る同社は、「車の省エネ化、小型化にもつながる」とみて開発に着手した。ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走るハイブリッド車より二酸化炭素を25%削減できる、と試算している。
ただ、実用化には課題も多い。超伝導線は、零下196度に冷やしておかなければ電気抵抗ゼロにならない。試作車では冷却剤として液体窒素を使用しているが、2時間連続走行するのに必要な4リットルの液体窒素は3時間ほどで蒸発してしまう。実用化するには蒸発しないよう小型の冷却機を開発し、液体窒素の補給基地を整備する必要がある。また線材の生産コストが通常の銅線より割高なのも逆風だ。
同社は現在、造船会社などと共同で船舶用の超伝導モーターの開発を進めており、米国では送電線用の超伝導ケーブルの実証試験も行っている。今回の試作車は、19日から札幌市で開催される「北海道洞爺湖サミット記念 環境総合展」で一般公開する予定で、「課題は多いが、興味を持つ自動車などのメーカーが結集すれば、実用化は遠くない」と期待をかけている。