田園地帯を走る福井鉄道福武線=福井県鯖江市
赤字続きのローカル線を存続させるため、自治体が線路や駅舎などの施設を買い取って鉄道事業者に貸し付ける「上下分離」型経営が広がっている。地域の足を守るために自治体が身を削る「究極の策」(国土交通省幹部)で、今月1日には上下分離を後押しする改正法も施行された。しかし、地方の財政難や燃料費高騰などの課題を抱え、先行きは不透明だ。(吉野太一郎)
鉄道の上下分離は、沿線自治体が土地や施設(下部)を取得・所有し、事業者を経営・運行(上部)に専念させる方式。自治体が施設の維持管理費や減価償却費などを負担し、事業者の経営を安定させる狙いがある。
福井県中部を走る福井鉄道福武線(21.4キロ)。福井県と沿線3市は同鉄道から線路や駅舎などを約12億円で買い取るなどして、同線の累積債務約28億円を解消する計画を11月にも国交省に提出する。
ほぼ全線がJR北陸線と並走しており、ピークだった64年に約971万人いた利用客は、07年度には約161万人にまで落ち込んだ。昨年10月と今年4月には、車両や施設の老朽化が原因とみられる脱線事故も相次いだ。「沿線に高校や病院も多く、地域の足として必要だが、このままでは経営は難しい」と福井市の担当者。同線は06年度に約4千万円の赤字だったが、福井県は「上下分離後は黒字に転換する」とみる。
こうした上下分離経営は、すでに和歌山県の和歌山電鐵(14.3キロ)で実施。岩手県の三陸鉄道(107.6キロ)や鳥取県の若桜鉄道(19.2キロ)、秋田県の秋田内陸縦貫鉄道(94.2キロ)でも導入を検討している。
施行された改正地域公共交通活性化・再生法は、自治体が用地と施設を取得して鉄道事業者に無償で貸し付ける際、自治体の財政支出に最大3分の1を補助する。福井、三陸、若桜、秋田内陸縦貫の各鉄道も活用する方針だ。