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08年度企画運営委員の1年を振り返って
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08年度企画運営委員の1年を振り返って

 朝日21関西スクエアの08年度企画運営委員は、この3月で1年間の任期を無事に終えました。そこで、退任される5人の委員のみなさんに、この1年間を振り返ってもらい、ご感想や朝日新聞社、関西スクエアへの注文などを寄稿していただきました。なお、09年度の新しい委員は別掲の通りです。(五十音順)



関西のきらめきつなぐ役割を

池坊 由紀さん
華道家元池坊次期家元

 

 経済状況が極めて悪い中、ミッテラン政権下で文化大臣を10年間務めたフランスのジャック・ラング氏が文化教育について述べ、また米新大統領となったバラク・オバマ氏がグローバル経済と文化芸術を結びつけた発言をしているのが印象的だ。ジャック・ラング氏はフランスの文化予算を国家予算の1%近くまで引き上げた人物だが、情報と資金が一瞬で世界を駆け巡る中では文化と教育、つまり創造性を育てる政策における国の投資なくしては現在の危機は脱却できないとしている。
 またオバマ氏は新しいグローバル社会で生き抜くためには子供たちに科学や数学のみならず芸術教育を通し創造性を高める必要性を説いた。国は違っても共に2人が説いていることは、混沌とした高度情報社会の厳しい現代において人がたくましく世の中を生き抜いていくために創造性が求められ、それを育むには文化・芸術・教育が大きな役割を持っているということだ。これはまさしく人を内側から変え、創り、活性化させるのみならず人の潜在能力をも何倍にも引き出すこれらの分野の底力ではないだろうか。
 関西スクエアの委員になって1年、他の委員の方々から多岐にわたるお話を伺い、改めて経済集中の東京と比べ関西は多角的な魅力ある豊かな地域であることを実感した。社会経済面では先端技術とともにニッチな、しかし確かな技に支えられた企業があり、文化では上方芸能はもとより華道・茶道なども草の根にまで浸透し日々の生活に潤いと笑いがある。
 2008年度より設けられた関西スクエア賞はそんな関西の特性が如実にあらわれた今後への期待値の高い賞でもあり、その候補者の多彩な顔ぶれは十分に元気を与えてくれた。不況という言葉の下で、そのきらめきが失われないようにむしろささやかに輝くその多面性こそが人に希望と活力を与えていくのだから。関西スクエアにはそのきらめきをつなぎあわせプリズムの役割を果たしてほしい。 (いけのぼう・ゆき)

 


 

「百年に一度の危機」なのか

小池 俊二さん
サンリット産業会長、前大阪商工会議所副会頭

 

 委員に就任してあっという間に1年が過ぎ去ってしまった。日本や世界で政治経済の変化が余りにも速かったからだと思っている。
 そういえば、1年前、石油や殻物などの資源の国際価格の上下変動は想像を超えるものであった。米国や欧州の著名な金融機関が次から次へと事実上破綻し、自動車や家電などの製造業では大量の人員整理に踏み切り、株価暴落と失業者激増といった恐慌の始まりの1年でもあったと振り返ることができる。
 ところで、阪神淡路大震災のような大きな自然災害のとき「百年に一度の災害」といわれるが、今回のような金融危機についても同じように「百年に一度の危機」といった言葉を枕詞のように政治家も経済人も頻繁に使う。言葉に厳格なはずのマスコミも例外ではない。今回の金融危機にかかわったグリーンスパン元FRB議長の言葉が一人歩きしているとも考えられる。今回の米国発の世界的金融危機は投機的金融資本の意図的な投機活動の帰結であるが、制御不能な自然現象にすり替え、「百年に一度」という。今回の危機の本質を放置すれば「百年に何度」でも同じような危機が訪れるのではないかと思う。
 昨今、米国保険会社大手のAIGが16兆円の膨大な公的資金を受けることになった。その会社が専門的知識を持つ400名の幹部社員が外部に流出しないよう足止めするため、209億円もの巨額ボーナスを支払ったことで米国民の顰蹙を買っている事実をどう考えるか。長年に亘って高いリスクの金融派生商品と過剰な報酬を容認してきた市場原理主義的投機活動の根は深く、米国型経営責任とは何かを改めて考えさせられる。 (こいけ・しゅんじ)

 


 

グローバル? でも、新旧が共存するイタリア

武谷 なおみさん
大阪芸術大学文芸学科教授

 

 「関西スクエア」の委員を務めさせていただいたのをきっかけに、この1年はイタリアの新聞記事に注目した。子供たちの夏休みが3カ月、卒業式はなく入社時期もばらばらの「群れをなさない」国民性。その反面、権利主張のストライキは日常茶飯事で、「オペラ座の怪人」の不気味な仮面をつけたオーケストラ団員の待遇改善スト、ダンテの詩を引用しつつ「知識」の機会均等を求める学校関係者のスト、サッカーの応援過熱を規制したスポーツ監督局に「5分間の沈黙」ストを演出するサポーターたち。古くて新しいイタリアの日常がぞくぞく現れる。任期を終えるにあたり、春を代表する復活祭のニュースから、経済危機のまっただ中でもどこかユーモラスな「イタリアの今」を紹介しよう。
  教皇庁のお膝元のローマ。カトリック教徒が金曜日に肉を断食した昔の慣習にのっとって、復活祭に先立つ40日間は学食のメニューから金曜日に肉を消そうという教育委員会の通達が、政教分離の観点から物議をかもした。だが、喧々諤々の議論を楽しみ、様々な選択をする気風もまたイタリアにはある。なにも肉を断たなくても、この時期イエスの苦難を思って安逸な生活を反省し、復活祭まで金曜ごとに別のものをがまんしよう、という声が各地の教会から上がった。さまざまな町で司教が若者むけのアピールを行っている。携帯電話、車、iPodの使用をやめる、“No メール day!”を実行してはどうか? むろん強制ではないのだが、興味深いのはヴェネツィアの提案で、その期間は「ミネラル・ウォーターでなく、蛇口の水を飲もう」と呼びかけている。 (たけや・なおみ)

 


 

紋切り口上避け、独自の視点にこだわりを

中西 寛さん
京都大学公共政策大学院教授

 

 委員を1年間させていただいて、全く異なる分野の方のお話しを聞き、また、新聞社の舞台裏をわずかでも覗くことができたのは貴重な経験だった。
 この間、改めて新聞を始めとするメディアを取り巻く環境が大きく変わっていることに印象づけられた。朝日、読売、日経の3紙が共同でホームページを立ち上げることなど、少し前まで想像もできなかったであろう。他方で論壇誌が相次いで休刊に追い込まれるなど、広告料の削減や情報の陳腐化によってメディア産業はおしなべて苦境にある。情報テクノロジーの発達によって誰もが発信できる時代に、報道や出版の意義はどこにあるのか、また、どのように安定した経営基盤を確立できるのか、世界の誰もまだ答えを見出していない難問である。
 しかし日々流転する情報が増えれば増えるほど、そうした情報に左右されない切り口や、更には熟慮といったものの価値が高まっているのではないだろうか。特に紙媒体で「固定」された情報は、「今」を未来に伝えるものとしてますます貴重になっていくとも言える。紋切り口上を避けたオリジナルな視点へのこだわりを新聞にはこれまで以上に求めたい。  (なかにし・ひろし)

 


 

「もうろう大臣」、なぜ報道の主役

山折 哲雄さん
宗教学者

 

 午前中は、あいかわらず新聞を読んで居眠りをし、ときに目覚めて妄想を楽しむ、あまり波風のおこらない1年でした。ところが昨年の暮れになって大異変が発生、百年に一度の「金融恐慌」とのことでしたが、今年に入って例の中川大臣の「もうろう発言」がとび出し、世界のメディアを席捲しました。ときあたかもアメリカの新国務長官になったヒラリー・クリントンさんが来日し、華やかな笑顔をふりまいて精力的な外交を展開、という皮肉な成り行きになりました。
 私が胸をつかれたのは、日本を代表するどの新聞も、中川もうろう大臣を主役に仕立て、カラフルなクリントン長官を脇役にする紙面づくりをしていたということです。一瞬、日本のジャーナリズムはシテとワキの役割をとり違えたのではないかと疑ったほどであります。せめて1紙ぐらいは、その逆を行く気概を示してもよかったのではないでしょうか。
 私はかねて「朝ズバッ!」のみのもんたさんのキャスターぶりを反面教師としてよく観ていました。いつも庶民の側に立ち、正義の御旗を押し立てて、声高らかに糾弾する姿が拍手喝采をうけているようでした。その「朝ズバッ!」も今度のことでは、相変わらず中川もうろう大臣をにぎにぎしくとりあげ、国際外交の主役をおつまみ程度にしか話題にしておりませんでした。
 それが何とも切ない、心残りであります。  (やまおり・てつお)

 

09年度企画運営委員のご紹介


 2009年度の朝日21関西スクエア企画運営委員を、次の5人の方にお願いしました。関西スクエアは98年に発足し、会員数は現在約530人に上っています。この1年間で50人ほど増えました。委員の方々と朝日新聞社で定期的に懇談会を持ち、朝日新聞や関西スクエアへのご助言、ご提言をお願いしています。任期は4月から原則1年間。ご紹介は五十音順です。


 

大西 正曹(おおにし・まさとも)さん

関西大学社会学部教授。産業社会学、地域再生論。各地の中小企業5000社近くを訪ねて活性化に取り組み、経営者から「まいど教授」と呼ばれる。著書に「よみがえる地財産業」など。66歳。


 

加藤 誠(かとう・まこと)さん

大阪商工会議所副会頭。1964年、伊藤忠商事に入り、ニューヨーク駐在、繊維カンパニープレジデント、副社長、取締役副会長兼関西担当役員をへて現在、相談役。68歳。


 

佐藤 卓己(さとう・たくみ)さん

京都大学大学院教育学研究科准教授。メディア史、大衆文化論。「『キング』の時代」でサントリー学芸賞。近著に「輿論(よろん)と世論(せろん)」。48歳。


 

チョン インキョンさん

風刺マンガ家。ソウル生まれ。京都精華大で学び、同大学非常勤講師。第6回京都国際マンガ展金賞、著書「コバウおじさんを知っていますか」で黒田清JCJ(日本ジャーナリスト会議)新人賞。35歳。


 

藤井 絢子(ふじい・あやこ)さん

琵琶湖浄化のせっけん運動や菜種油の廃油を燃料に使う菜の花プロジェクトを展開。同プロジェクトネットワーク代表。滋賀県環境生活協同組合理事長。著書に「菜の花エコ革命」。62歳。


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