-大西さんには2009年の企画運営委員を引き受けていただきました。
商社役員、漫画家、社会学研究者、生活協同組合代表といっしょでした。いろんな分野のお話がきけておもしろかった。京都国際マンガミュージアムを訪問し、日本の漫画が欧米、アジアの様々な国に翻訳されて、読まれているのを知って驚きました。09年の委員の方とはいまも連絡をとって、講演をたのんだりしています。
-スクエアは1998年に始まり、14年目に入りました。
(委員の名簿を見ながら)この13年で61人ですか。これだけのOB・OGがいるんですね。これは宝ですよ。活用しない手はないのとちがいますか。
つねづね思ってたんですが、市民とのオープンセミナーというか、双方向で交流、意見交換のできる場をもうけて、アイデア、情報の渦というか、うねりのようなものにしていけないでしょうか。
委員の経験者に集まってもらって、そのなかでまずクローズな議論をする。「関西をどうする」「大阪をどうする」とか、経済とか、文化とか、いろいろとあるでしょう。まずは雑談ですね。そのなかで、いろいろなテーマがでてくるのでしょうから、そのテーマを整理して、読者に参加をよびかけるイベントを開催してはどうでしょうか。委員のアイデアをもとに、それを市民に発信していくのです。
イベントの工夫が肝心ですね。パネルディスカッションがよくありますが、これはよくない。数人のパネリストが壇上にいて話し合うわけですけど、聞いているほうからすると「上から目線」ですね。これだと、会場からは、なかなか意見はいえないんですね。双方向にならないんですよ。
ラウンドテーブル方式というか、パネリストが向かいあって座って、議論をする。そのまわりを、聴衆というか参加者が囲むようにするのはどうでしょう。テレビの「朝まで生テレビ」のまねですけどね、参加者も質問をどんどんするように促すのです。ほかにもいい方法はあるかもしれません。
まぁ、まずは企画運営委員の同窓会を開いてはどうでしょうか。そこで、みなさんで話し合って、いろいろ考えを出し合うのはどうでしょう。
-関西スクエアという枠にとらわれずに、朝日新聞の外に出て行くべきだ、ということですね?
「地方がえり」キャンペーンというのがひとつの私のアイデアです。委員も、朝日新聞もそうですけれど、育ててもらったわけです。地域であったり、業界であったりするわけですが、その育ててもらったところを見直そう、地域の魅力、生き方を見直して、若い人たちに伝えていくことはできないでしょうか。けなす、批判するのは簡単なんです。この地域はこんなにおもろいんやで、という伝える作業です。
というのも、若い世代、高校生、大学生に閉塞感があるんです。大学で教えていて実感します。就職難があり、将来が見えない。メディアでは、経済の先行き、政治の行き詰まりなどなかなか難しい時代であることを伝えます。それはそうでしょう。でもそれは一面的というか、表層であって、実相はなかなか複雑で、よく見ると活気に満ちていたり、活躍の場があったりする。
私は東大阪の中小企業に30年かかわらせてもらってますが、この企業群は新幹線、海底ケーブル、瀬戸内海をまたぐ数々の大橋に貢献している。主要な部品の多くをここの工場が作っている。そこで部品の実物を子どもたちに見せて説明すると、目が輝き出すのです。また生き残りに成功している元気な商店街のエピソードをすると、地元の文化に誇りをもつようになる。
世の中の実相といいますか、現場の話に若者は飢えているのです。その飢餓感に、スクエアの委員の人脈、経験はこたえていく可能性があるし、求められているのではないでしょうか。
おおにし・まさとも 1942年、兵庫県明石市生まれ。大阪府枚方市在住。関西大学名誉教授。専攻は産業社会学、地域再生論、中小企業論。東大阪を中心に各地の中小企業を訪ね、活性化に取り組む。中小企業を訪ねる際に「まいど」とあいさつするので、経営者から「まいど教授」と呼ばれる。著書に『よみがえる地財産業』(同友館2005年)。