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2008年01月16日


ジャン:パキスタンで年末にだれかが暗殺されたって聞いたわ。
貝瀬記者:ベナジル・ブット元首相のことだね。車から支持者に手をふっていたときに、だれかが銃をうち、爆弾も爆発させたんだ。
ポン:だれがそんなことをしたの?
貝瀬記者:パキスタン政府は「イスラム過激派の犯行」といっているけど、ブット氏の支持者は政府が関係していたのではと疑っている。まだ本当のことは分かっていないんだ。
ケン:何だか複雑な事情があるみたい。背景をもっと知りたいな。
●選挙活動中にブット元首相が暗殺され政情不安に
◆再び首相を目指した矢先に ムシャラフ大統領とは対立
貝瀬記者:パキスタンの大きな野党(政権をとっていない政党)の指導者だったブット氏は、今月8日に予定されていた総選挙の運動をしていたんだ。たくさん議席がとれれば、首相に返り咲くことも可能とみられていた。
ジャン:それをじゃましたい人たちがいたんだね。
貝瀬記者:ブット氏は、アメリカと関係がよく、イスラム過激派(イスラム教徒のうち、過激な方法で自分たちの考えを実現しようとする人たち)のテロを批判していた。だから、アメリカを敵とみる過激派によく思われていなかった。
でも、政府に犯人と名指しされた過激派は犯行を否定している。ブット氏の支持者らは、軍や政府の情報機関がやったとうったえているんだ。
ポン:何で政府がそんなことを。
貝瀬記者:「選挙で野党が勝ったら、ムシャラフ大統領の権力がおびやかされるから」というのが野党側の言い分だ。こんな疑いが出るのも、激しい権力争いの歴史があるからだ。
この国では、武力で政権をくつがえす軍事クーデターがくり返されてきた。1977年のクーデター後には、首相だったズルフィカル・アリ・ブット氏が処刑された。この人は、暗殺されたブット氏のお父さんだよ。
ケン:親も殺されていたなんて。
貝瀬記者:父の政党を継いだブット氏は88年の選挙で勝ち、女性の社会進出が進んでいないイスラム圏で、初の女性首相になった。93年の選挙で2度目の政権についたが、汚職の疑いで当時の大統領に解任され、イギリスなどで事実上の亡命生活をしていた。
ポン:ムシャラフ大統領はどんな人?
貝瀬記者:ムシャラフ氏は九九年に陸軍参謀長としてクーデターを起こし、当時の首相や大統領を追放。2001年に大統領になり、去年10月に参謀長兼務のまま再び大統領になろうとして、国内外から厳しい批判を浴びた。
◆核を持ちテロとも最前線の国 2月に延期された選挙に注目
ジャン:ブット氏はどう思ってたの?
貝瀬記者:ムシャラフ氏を「軍事独裁者」と批判し、参謀長をやめるよう求めた。でもその一方で、総選挙後にはおたがい協力していくことを考え、話し合いも続けていたんだ。
ポン:何で?
貝瀬記者:2人は対立していたけれど、アメリカとは仲良く過激派には反対、という立場では一致している。これに目をつけたアメリカが、協力を強く働きかけたらしい。この点でゆずってでも、政治の表舞台に復帰したいとの思いが、ブット氏にはあったようだ。実際、去年10月に八年ぶりの帰国を許された。
ケン:でも、結局はうまくいかなかったんだよね。
貝瀬記者:ムシャラフ氏が11月に、反対派のおさえこみのために非常事態を宣言するなど、強い態度をとったため、ブット氏は再び対決姿勢になった。ブット氏の党は、総選挙で与党をおびやかす存在になっていたんだ。
ジャン:世界も動きを注目しているらしいけど。
貝瀬記者:何といっても、パキスタンは核兵器を持っているからね。政治が混乱すれば、核が過激派の手にわたる危険もある。
それにとなりの国は、テロを起こす人がひそんでいるといわれるアフガニスタンだ。「テロとのたたかい」の最前線として、アメリカはパキスタンに、自分たちと親しく安定した政権をつくろうと必死なんだ。
ポン:これからどうなるのかな。
貝瀬記者:注目は2月18日に延期された総選挙だ。選挙戦でまたテロが起きたりすれば、混乱はより大きくなる。選挙が無事に行われても、不安定な状況が収まるかどうかはまだわからないけどね。
●パキスタンはこんな国
●面積 79万6000平方キロメートル(日本の約2倍)
●人口 1億5680万人(2006/07年)
●首都 イスラマバード
●識字率(字の読み書きができる人の割合) 54%(05/06年)
●宗教 イスラム教(国教)
●産業・経済 農業と綿工業が産業の中心。最近、経済はよくなっているが、物価の上がる率や貧困率の改善はまだ課題
●日本との関係 日本は主要援助国の1つ。貿易では、綿糸や繊維製品、石油製品、革製品などを輸入し、日本からは自動車やその部品、機械、金属品などを輸出している
(外務省のウェブサイトを参考にしました)
●きょうのポイント
▽パキスタンで2007年12月27日、選挙活動中のベナジル・ブット元首相が暗殺された。ブット氏は1988年、イスラム圏で初の女性首相になった人。
▽ムシャラフ大統領は07年10月、参謀長のまま再び大統領になろうとして批判を浴びた。ブット氏は大統領を批判しながら、一部で協力する交渉をしていたが、うまくいかなかった。
▽核を持っている国、「テロとのたたかい」の最前線として、パキスタンの情勢が注目される。まずは2月に延期された総選挙の結果がどうなるか。
記者:貝瀬秋彦(朝日新聞外交・国際グループ)
提供:朝日学生新聞社