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2008年6月4日


ジャン: 小笠原諸島の小さな島で五月、人が育てたアホウドリのヒナが巣立ったって聞いたよ。どんな鳥なの?
中山記者: 翼を広げると二メートル半もある、白くてきれいな海鳥よ。
ケン: へぇーそんなに大きいんだ! でもなんで人に育てられていたの?
●火山ない聟島に繁殖地つくる計画
◆鳥島からヒナ10羽「引っ越し」
◆親の代わりに世話して3か月
◆4〜5年後、子育てにもどる
中山記者: アホウドリが卵を産んでヒナを育てる所は、東京から南へ580キロもはなれた伊豆諸島の鳥島。東京と神戸くらいの距離があるのよ。でもそこは火山の島なので、もし噴火したら危ないでしょ。火山のない島に移して、新しいすみかをつくろうと考えたのよ。
ポン: ほかの場所にはいないの?
中山記者: 鳥島には2000羽以上いて、沖縄の八重山諸島の北にある尖閣諸島にも数百羽いるみたいだけれど、ほかにヒナを育てる場所は見つかっていないの。5月には北へ飛んで、夏はベーリング海やアリューシャン列島あたりで過ごしているわ。
ケン: ずいぶん少ないんだね。
中山記者: 昔は数100万羽いたともいわれているわ。でも一羽もいなくなったと思って、1949年には「絶滅宣言」まで出たのよ。
ポン: なんで減っちゃったの?
中山記者: 今から110〜120年くらい前、羽毛を取るために、たくさんつかまえてしまったためよ。
ジャン: かわいそう。でもまた増えてきたのね。
中山記者: がんばった人たちがいたからよ。30年以上も鳥島に通っているのは東邦大学の長谷川博先生。ヒナを育てる場所は坂になっていて、落ちてくる砂で卵がうまったり、ヒナが転げ落ちたりすることもあったの。長谷川先生たちは、ススキを植えたりして砂が流れにくいようにしたのよ。
ケン: 鳥島には、どうやって行くの?
中山記者: 八丈島から16時間くらい、小さな船で行くの。海が荒れると、ゆれるから大変。無人島だから食料も持っていかないとね。
ケン: それじゃ普通の人はなかなか行けないね。
中山記者: 千葉県我孫子市の山階鳥類研究所の人たちは、91年から通っているわ。 ポン: 何をしているの?
中山記者: 島の中で、もっと平らで巣をつくるのに安全な場所を見つけて、アホウドリそっくりの模型をたくさん置いて、呼び寄せたの。
ジャン: それで本当に集まったの?
中山記者: 毎年続けていたら増えてきて、95年にはそこで初めて卵を産んだカップルもいたわ。でも模型だって分からずに、「好きだよ。結婚しよう」って、ずっとダンスをして見せていた鳥もいたのよ。
ケン: おもしろい! すめる場所も増えてきたね。
中山記者: 今度は別の島にも増やそうと思って、今年2月、ヒナ10羽を聟島に引っ越しさせたの。日本とアメリカが協力する五か年計画よ。
ポン: でも、どうやって島から島へ運んだの?
中山記者: 350キロもはなれているから、ヘリコプターに乗せたの。
ケン: 運んだのはヒナだけ?
中山記者: ヒナといっても体重は4キロ! 巣は急ながけの下にあるから、かつぎ上げるだけでも危険だったわ。親鳥まで連れて行くのは無理だから、人間が代わりをするしかないわね。
ジャン: 親鳥がいないと、どうやって育てるの?
中山記者: 聟島も無人島なので、研究所の人たちはテントに住んで、ヒナたちにえさをやって3か月も育ててきたのよ。
ポン: えさは何?
中山記者: イカやトビウオ。それから水もたっぷりね。
ケン: 飛び方はどうやって覚えるの?
中山記者: アホウドリの親もヒナに何も教えず、5月になると先に島をはなれてしまうの。ヒナは自分で翼を広げて風に乗ることを覚えて、海へ飛んでいくのね。
ケン: すごいなぁ。ヒナは黒かったけれど、大人は白いね。
中山記者: 羽はだんだん白くなっていくの。きれいな白いアホウドリになるまでには10年以上もかかるのよ。
ジャン: 巣立った、この後は?
中山記者: アホウドリは卵を産むために故郷の島へもどる習性があるの。今回巣立ったヒナも4〜5年したら、聟島にもどってくるでしょうね。ヒナを運ぶ仕事はあと4年続けるから、聟島は将来、アホウドリでいっぱいになるかも。楽しみね。
●きょうのポイント
▽アホウドリは、絶滅が心配される大型の海鳥。羽毛を取るためにたくさん殺されて、一時は絶滅したと思われた。
▽そのヒナ10羽が、小笠原諸島の聟島で5月、無事に巣立った。人が親代わりをつとめた。
▽火山があって危ない伊豆諸島の鳥島から、ヘリコプターで引っ越しさせた。安全な新しい繁殖地を、人が手助けしてつくる計画。引っ越しは日本とアメリカの計画で、あと4年続ける予定。
記者:中山由美(朝日新聞科学グループ)
提供:朝日学生新聞社