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2008年7月23日


ケン: 日本が初めて世界遺産で「落選」したってニュースになってたね。
小川記者: 岩手県の平泉のことね。今から900年くらい前に、奥州藤原氏という武士の一族が仏教の教えや考え方に基づいてつくった町よ。国宝の金色堂がある中尊寺など九つのお寺や遺跡を「平泉」として、政府は推薦したんだけど、7月はじめにカナダでの国際会議で、世界遺産への登録が見送られてしまったの。
ポン: 世界遺産って何だかわからないんだけど……。
◆遺産の保護を目的にできる
◆観光や町おこしになる傾向
◆文化庁、3年後に再び推薦
小川記者: 地球上に残る大切な場所を残そうと、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1972年につくった制度なの。お寺やお城などは「文化遺産」、森や海などは「自然遺産」、どちらもある場所は「複合遺産」って分けられるの。いま全部で878あるわ。有名な中国の万里の長城やエクアドルのガラパゴス諸島なんかもそうなの。日本にあるのは14。広島県の原爆ドームや奈良県の法隆寺などが選ばれているわ。
ジャン: どうやって決まるの?
小川記者: 世界遺産になるには、まず各国の政府が、ふさわしいものをとりあえずのせておく「暫定リスト」から、順番に選んでユネスコに推薦するの。すると、ユネスコの世界遺産委員会にたのまれた専門家が、その場所まで調べにくる。その人たちの意見を参考にして、世界遺産委会でみんなが選ぶのよ。
ケン 世界遺産になるといいことあるのかな?
小川記者: 日本では今、世界遺産がブームになってるわ。七年ぐらい前から、テレビ番組や雑誌などで、世界遺産になった場所が紹介され始めて、そこに旅行に行く人が増えてきたの。世界遺産になって有名になると、それまでの何倍ものお客さんが来ると言われてるわ。だから観光などで町おこしをしたい人たちにとって、お金もうけのチャンスでもあるの。
ジャン: それって、もともとの目的とちがうんじゃないの?
小川記者: そうね。世界遺産条約は、もともと人類にとって大事な場所を、後の人たちのために守り伝えていこうということで始まったの。それがいつの間にか、町おこしやお金もうけの側面が強くなってきてしまった。そろそろ「遺跡や自然の保護」という本来のスタート地点に立ち返るべきだという人もいるわ。
ポン: でも、平泉はなんで落ちちゃったのかな?
小川記者: 7月の委員会が始まる2か月前に、専門家がつくる国際記念物遺跡会議(イコモス)という団体が、「平泉は世界遺産として認めるには、世界に共通する価値の証明ができていない」といって、「今回は登録しない方がいい」という意見を出していたの。日本政府は、「平泉は平和を求め、自然を生かした町だったんです」と主張したんだけど、評価は変わらなかったのね。関係者の中には、「日本独自の伝統や思想を、外国の人に理解してもらう難しさを感じた」という人もいるわ。
ケン: 平泉は、これからどうなるの?
小川記者: 世界遺産を担当する役所の文化庁は、もう一度チャレンジして、「3年後の世界遺産委員会を目指す」と言っているわ。日本では、平泉以外で推薦待ちの暫定リストに入っているところが八つ、その暫定リスト入りを待ってるところが32もあるんだけど、しばらくは平泉の登録に力を注ぐことになるみたい。
ジャン: でも、世界遺産って、けっこう数が多いね。
小川記者: 今のペースで増え続ければ、数年以内に1000件をこえると言われているわ。数が多すぎると保護・管理ができないので、最近になって、ユネスコは登録を厳しくするようになってきているの。これが平泉の落選にも影響しているわね。
今年は43件推薦されて、27件しか通らなかったのよ。世界遺産の全体の数を制限するべきだという人もいるので、今後はもっと厳しくなっていくと思うわ。
●きょうのポイント
▽「平泉」は中尊寺などからなる、奥州藤原氏がつくった町。仏教に基づき自然を生かしている。
▽世界遺産は文化・自然・複合の3種。合わせて現在878件。登録は厳しくなる傾向。
▽日本では暫定リストの8件、リスト入りを待つ32件があるが、政府は3年後のチャンスに平泉を再び推薦する方針
記者:小川 雪さん(朝日新聞文化グループ)
提供:朝日学生新聞社