企業の社会貢献活動を顕彰する第4回「朝日企業市民賞」の受賞企業・団体に近畿労働金庫(大阪市)、綜合警備保障(東京)、ソニーセミコンダクタ九州(福岡市)、ヨコタ東北(山形県新庄市)が決まった。食品、介護サービス会社などで消費者の信頼を裏切る不祥事が相次ぎ、企業の存在価値が問われる中で、受賞4企業・団体は本来の事業特性を生かすなどして、地域のくらしに貢献する地道な活動が高く評価された。
今回の応募件数は全国から171件で社会福祉、環境保護、地域貢献、教育支援など多様だが、地域に根ざした活動が目立った。受賞活動の詳細と応募全件の活動項目を紹介する。
第4回 朝日 企業市民賞 応募企業と活動内容
講評
企業価値高める社会活動
産業・金融エディター 杉浦信之
企業の存在価値とは何なのか――。
あらゆる角度から企業がこう問いかけられる時代になりました。利潤を追求し、株主など出資者に還元することが目的とされる企業ですが、そのために法令に背く事例が後を絶ちません。そんな企業は市場と消費者から見放され、企業価値は大きく損なわれます。
一方、企業の合併・買収をめぐる動きは日を追って増えています。その際、「企業とは誰の物か」「企業価値を高めるのは誰か」という古くて新しい問いが繰り返されます。
今回受賞した企業・団体の活動は派手さのない、地道な印象のものが多いのではないでしょうか。ですが、それぞれが住民のため、地域のため、そして地球環境のため、その事業を通じて持続可能な範囲で取り組んできており、いぶし銀のような光を放ち、利潤とは別の価値を生み出しています。
企業がその存在価値を維持・発展させる意味で重要な要素の一つが、社会に貢献しているかどうかという観点に移ってきていることは間違いありません。法令順守は当然として、地域に根ざした市民あるいは地球市民としておこなう事業が社会的に有益であるからこそ、その企業は利潤を得られると考える時代――。そんな言い方さえできるのではないでしょうか。そうした企業が株主や顧客に支持され、企業価値を高めるのです。
朝日新聞社は今後も、企業が社会に貢献する新しいチャレンジの姿を紹介していきます。
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受賞4企業・団体の活動内容
近畿労働金庫
新分野のNPOにも融資
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| NPO発足向けなどの新融資制度の調印式。協力するきょうとNPOセンター、京都労働者福祉協議会、近畿労働金庫の代表者(左から)が手を組んだ=05年11月、同労金提供 |
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財政難で地方自治体の住民サービスが細れば、地域のくらしを支えるNPO(非営利組織)の活動の存在感は増す。「環境、防犯など新しい分野に取り組み始めたNPOを支援しよう」と、近畿労働金庫(大阪市)は05年12月、きょうとNPOセンターなどと協力し、京都府内のNPO向けの新たな融資制度「きょうと市民活動応援提携融資制度」を設けた。
近畿労金の従来のNPO向け融資は福祉分野での実績が条件だったが、新制度は分野を広げたうえ、実績がなくても融資できるようにした。
(1)労働組合が福祉活動を目的に出資・運営する京都労働者福祉協議会が労金に1000万円を預金(2)この預金をもとに労金は5000万円の融資枠を設けてNPO1件あたり上限500万円を融資(3)NPOセンター内に設けた「公益性審査委員会」が融資を申請したNPOの活動が地域に役立つかどうかチェック(4)労金が最終的に融資審査する、という仕組みだ=図。
労金は貸し倒れリスクも計算するが、預金を担保にすれば与信枠を広げられるし、「預金者も預けたお金の使われ方がわかることを心がけた」(法橋聡・地域共生推進部長)という。今年6月末までの融資実績は、子どもを守る防犯グッズの製造、節水グッズ製造、障害者向けパン製造設備の資金などとして計7件、2500万円だ。
労金は戦後、労組員らが生活を支えあおうと設けたファンドが起源。利益を追う商業銀行とは異なる、非営利の「福祉金融機関」の性格だった。
その精神に基づいて近畿労金は00年、NPOの運転資金、設備資金などを対象に融資する「NPO事業サポートローン」を国内金融機関で初めてつくった(旧東京労働金庫も同時)。当時、一般銀行はNPO向け融資に消極的だったが、近畿労金では「仲間の支え合いだけでなく外にも目を向けるべきだ」と声が上がったためという。
その延長線上にあるのが今回の新制度だ。心配される融資の焦げ付きもいまのところないという。融資した後もNPOの運営の相談に丁寧に応じて、経営面の悩みなどに気づくことのできる関係づくりをめざしている。
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綜合警備保障
小学校に出張し防犯教室
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イラストで防犯の要点を説明するガードマン。児童も熱心に見入る=9月上旬、千葉県市川市の中国分小学校で |
小学1年生の教室の黒板に大人5人の顔写真が並べられた。1人は笑顔、残り4人はにらみつけたり、サングラス姿だったりなにやら怪しげ。「ついていくと良くないのは、だれかな」と指導役のガードマンが尋ねると笑顔の写真には手がほとんど挙がらない。「正解は全員。見た目に関係なく、知らない人についていっちゃだめだよ」
納得した様子の児童の背後に不審者を装った別のガードマンが現れ、立ち去った。児童は教わったとおり身なりの特徴を教師に伝えた。綜合警備保障が小学校を対象に実施する出張授業「ALSOK あんしん教室」はそんな風に進められる。
施設警備などに従事する現役ガードマンが3人1組で防犯の要点をクイズや、児童をまじえた「寸劇」形式で説明する。制服姿の臨場感や多様な演出で児童を引き込む。
「児童自身の防犯意識を高められないだろうか」。営業管理部の社員が03年に、ある小学校の総合学習の授業に参加した際に聞いた校長のそんな一言がきっかけだった。大阪教育大付属池田小での児童殺傷事件以降、校内への監視カメラ設置や防犯ブザー配布が各校で進んでいた。だがその後も不安は解消されず、児童の「防犯力」向上が課題になっていた。
そこで入社10年前後の中堅社員が「生活の安全にかかわる企業として看過できない」と主体となって企画を進めた。そして、犯罪被害が起きやすい場所を想定した「安心して登下校編」「安心してお留守番編」「安全な街ってなんだろう編」の3指導案をつくった。
04年秋に神奈川県内の小学校で始めたところ、口コミで評判が広がり、依頼が急増した。全国の支社、グループ会社でガードマンに想定問答を教えたうえで派遣する態勢を整え、出張先の累計は2000校を超えた。
日々の本来の業務は夜間が主体で、顧客と直接かかわる機会は少ない。それだけに児童の反応に直接ふれることはガードマンに「通常業務の大切さを改めて認識した」と感じさせ、士気向上にもつながっているという。
同社は「児童連れ去り事件がゼロになる日まで」を目標に「あんしん教室」を続ける考えだ。
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ソニーセミコンダクタ九州
農地に水張り地下水補う
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| 地下水を補う活動に協力する農家の水田=8月上旬、熊本県菊陽町で |
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半導体メーカーによる「田植え式」が6月末、熊本市の隣、熊本県菊陽町であった。主催者は菊陽町に工場(熊本テクノロジーセンター)を構えるソニーセミコンダクタ九州(福岡市)だ。
工場は半導体製造工程で繰り返す洗浄のために大量の地下水を使う。そこで周辺農家に田に水を張るよう依頼し、その水を地下に浸透させて人工的に地下水を補おうという地下水涵養活動を03年から続ける。社員と地元民が一緒に泥にまみれ、地域の水資源の恵みを確かめあう恒例行事が田植え式だ。
その地下水は熊本市とその周辺の100万人分の飲み水をまかなう。菊陽町や隣の大津町の白川中流域の水田は地中に水がしみこみやすい地下水の「源」だが、減反で水田が減り、細っていた。
01年に稼働したこの工場は年間150万トン以上の水を地下から引き揚げる。非政府組織(NGO)の環境ネットワークくまもとに「一緒に地下水を守る活動を」と呼びかけられたのを機に、この活動を始めた。NGOなど環境問題のネットワークが農家・農協との間を仲立ちした。
中心は減反で畑にした転作田で、毎年5〜6月ごろの休耕期に白川水系から水を引いてもらう。作業に協力する田・農家の確保については、土地改良区が毎年ほぼ同量の水がしみ込むよう調整する。工場が農家に払う協力金は年計約400万円以上。水を張ると害虫防止効果もあるという。
専門家の調査では、工場が使う分の地下水を補う効果が確認されたという。06年度は工場使用量を約3割上回る191万トンの地下水補充効果があったという。07年度の目標は192万トンだ。この活動を参考に、04年度から熊本市などの助成で田に水を張る事業が周辺でも広がっている。
工場では、地元産の新米の一部が社員食堂のメニューに並び、農家の収穫祭には社員が足を運ぶ。周辺農家やNGOなどとの協力関係をさらに深め、息の長い取り組みにできるかどうかが課題だ。伊藤弘悦工場長は「地域とのつながりを大事にし、地下水を次世代にのこしたい」と語る。06年度からは白川上流域で植林活動も始めた。
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ヨコタ東北
容器リサイクルで福祉も
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スーパーから集めた食品トレーの分別で、リサイクル事業の一角を担う=8月上旬、山形県新庄市の障害者施設・たんぽぽ作業所で |
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フィルムをはがすことで、洗わずにリサイクルできるP&Pリ・リパック |
食品包装に使われるトレーには白色や柄物などさまざまな種類がある。使い終えたそれらのトレーを障害者の力を借りて分別し、トレーに再生するリサイクル事業が山形県新庄市で定着している。福祉と環境保護を結びつけた取り組みは「新庄方式」と呼ばれ、各地に広がり始めている。
新庄の動きの要になっているのが、食品容器メーカーのヨコタ東北だ。表面に張った薄いフィルムをはがすことで、洗わずにリサイクルに出せるトレー「P&Pリ・リパック」を98年に開発した。原材料の7割程度が再生原料だ。
「リ・リパック」を地元のスーパーに納入し、肉や魚の販売用に使ってもらう。他社製トレーも一緒に再生可能なので、回収箱は納入先以外も含め14店に置いている。市内の知的障害者の2施設が、回収・分別とトレーを細かい粒(ペレット)にする作業を分担。ヨコタ東北がリ・リパックに再生し、またスーパーに納入する。
回収・分別の「たんぽぽ作業所」では、10人で白色や柄物など色や種類の違いによって7種類に分ける。同作業所はかつて、仕事をみつけること自体が大変で「今日は何をすれば……」と悩んでいた。このリサイクルに加わって、作業する障害者の収入は以前の倍の月1万円程度に増えた。ペレット化は「友愛園」に6000万円の機械を無償で貸し出して任せている。
ヨコタ東北にとって、リ・リパック事業そのものは赤字だが、「障害者が働ける場を作りたかった」と横田健二社長。友人が障害を抱える息子と心中したことに衝撃を受け、働く場の提供で障害者の自立を支援したいと思うようになった。一方で、トレー製造業者としてリサイクルに取り組む責任も感じていた。それら二つの動機が結びついて生まれたのが、リ・リパック事業という。
取り組みの輪は他の都市にも広がる。横浜市や三重県四日市市などの福祉施設にヨコタ東北がペレット化の機械を貸し出し、リサイクルに協力してもらえるようになった。関心を持つ地方自治体からの問い合わせも多いという。ヨコタ東北は今後もこの輪をどんどん広げていきたいと考えている。
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