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会席の宴のごとく 現代美術家・山口晃さんが見た「対決」展
(2008年07月31日)

曽我蕭白「群仙図屏風」の前に立つ山口晃(やまぐち・あきら)さん=東京国立博物館平成館、片岡純氏撮影
日本美術史に名を刻んだ巨匠24人の傑作は、現代の絵師の目にどう映るのか――。東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展「対決―巨匠たちの日本美術」の会場を、同展にあわせて24人の肖像画を手がけた現代美術家の山口晃さんが訪れ、巨匠たちの名作の魅力について語った。
本展で山口さんが最も気になった組み合わせは、伊藤若冲(じゃくちゅう)vs曽我蕭白(しょうはく)。まず蕭白の「群仙図屏風(びょうぶ)」の前に立つ。
「胸ぐらをつかまれるような迫力があって、初めて見たときは3回ぐらい跳び上がりそうになりました」
細い筆で丹念に描き込んだ部分もあれば、薄墨ですうっと引いただけで、離れてみて初めて木の枝と気づく線もある。混在する筆致が、画面上にありえない揺らぎを生んでいる。塗り絵のように色をほとんど重ねていないのに、上手にコントラストをつけている、と山口さんは指摘する。
「細かい描写としっかりした構図、さらに山水画のような墨の線と極彩色の色づかいが相まって、幻惑的で強い麻薬がでているよう。蕭白とはつきあうのが大変そう、という印象です。それに対して若冲は、どこかきまじめですね」
若冲は「石灯籠図(いしどうろうず)屏風」で、点描の種類を変えて石の質感を出そうとしたといわれる。「絵師の立場から言えば、描いているうちに変わっちゃったんですよ、きっと。同じ点を打ち続けるのは大変です」
山口さんは、水墨画の巨匠の雪舟等楊(せっしゅうとうよう)vs雪村周継(せっそんしゅうけい)にも注目した。
「雪舟の『慧可断臂図(えかだんぴず)』はエグいというか、やりすぎな印象があります。当時の人にも相当変わって見えたのでは」
何層にも重ねて描かれた岩には、輪郭線の一方だけに影をつける「片ぼかし」という技法が多用され、空間に奥行きをつくっている。
「でも、片ぼかしで生じるのはそれほど奥行きがなく、少し浮いて見える程度です。多用すると、遠景が続いているのに、それが逆に見る者の方にせり出してくるような、妙に圧縮された空間が生まれます。こうした画面構成が雪舟の真骨頂で、彼のあくの強さを感じます」
雪村については、「雪舟と比べると、いい人に見えてきますね。小学生に人気が出そう。雪村のおもしろさは、気を込めるそばから抜けていくようなヘロヘロした線にあります」。
最後に本展全体の印象を聞いた。「24人も巨匠がいて、いろいろなパターンの作品が並んでいます。圧倒されながら、気づいたら会場を一周していた、そんな感じです。目移りするほど豊富で、それでいてもっと欲しくなる。会席料理のような展覧会ですね」(奥山敦)
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山口晃(やまぐち・あきら) 69年生まれ。やまと絵風の画法で、過去と現在が混在した世界に街の俯瞰(ふかん)図や人々の営みを描き込む作品で知られる。細部に込められたユーモアやウイットが親しみを誘う。
※山口晃さんの巨匠肖像原画は平成館1階ガイダンスルームで展示しています