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かつての死の海、マコンブがきれいに

2008年04月18日

 コンビナートからの排水で「死の海」と呼ばれた時期もある三重県四日市港を、海藻の養殖や海草の移植できれいにできないか。そんな浄化作戦を国土交通省四日市港湾事務所が検討している。公害の町からの脱却を目指す四日市市も後押しする。1月から地元漁協関係者らでつくる研究会を立ち上げ、港内ではマコンブの生育実験を進めている。(中村尚徳)

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四日市港内での生育実験で、順調に育つマコンブ(国交省四日市港湾事務所提供)

 研究会は「藻場(もば)要る」にちなんで「モバイル研究会」と名づけた。四日市大学の松永勝彦教授(環境化学)を座長に、四日市市漁協と楠町漁協の両組合長、市などの関係者ら11人が参加している。

 69年、石原産業による廃硫酸垂れ流しが摘発されるなどした後、コンビナートからの排水は厳しく規制され、四日市港の汚れは昔ほどではない。とはいえ、県によると、水質汚染を示す化学的酸素要求量(COD)の値は70年代から横ばい状態。赤潮の原因となる窒素やリンの濃度も下がってない。

 海藻は窒素やリンを吸収して成長する。その性質を生かした海水の浄化は過去にも例がある。松永教授は15年ほど前、徳島県椿泊湾で養殖ハマチの餌の分解で生じた窒素、リンを海藻のアナアオサで吸収を試みた。数年間続けた結果、赤潮の発生を抑えることができたという。

 港湾事務所では03、04の両年度、松永教授の指導でコンブの生育を試みた。四日市港でもコンブが育ち、食用にしても問題ないとの結果を得た。だが、この時は具体的な浄化計画までは立てていなかった。

 そうしたなか、国交省中部地方整備局などの「伊勢湾再生推進会議」が07年3月、再生行動計画をつくった。港湾事務所も計画の一環として、海藻を使った浄化作戦を本格的に検討することになった。

 昨年12月、港湾中央部の約1キロ沖で改めて実験に入った。防波堤の沖側と陸側に各1基のいかだを浮かべ、それぞれマコンブの胞子をつけた長さ5メートルのロープ3本をたらした。3月初旬には長いもので2メートルほどまで成長した。

 ただ、コンブは寒流系の海藻のため、水温が23度ぐらいに上がると枯死し、夏の間は浄化には使えない。このため、松永教授は「次の実験で、防波堤の周辺ではアラメやカジメを、沿岸部の砂泥ではアマモといった暖流系の海藻や海草を移植したい」と話す。冬季はコンブ、夏は別の海藻を組み合わせる方法もあるという。

 井上哲夫・四日市市長は「今回の試みを、近寄りがたい工業港と市民の距離を縮める『架け橋』にしたい。藻場は子どもが裸足で歩けるような教育の場にもできる。研究会で終わりにせず、次へつなげていきたい」と浄化作戦を注視している。

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