現在位置:asahi.com>コミミ口コミ> 記事

コミミ口コミ

ど根性大根「大ちゃん」、クローンで復活

2007年04月07日

 兵庫県相生市のど根性ダイコン「大ちゃん」。アスファルトを押しのけて生きる生命力が話題になった。あれから1年半。バイオ技術で2世が誕生、すくすくと育っている。

写真アスファルトを押しのけて育ったど根性ダイコン「大ちゃん」=05年10月7日、兵庫県相生市で
写真大ちゃん2世が育つハウス内で、再生に携わる川口大助さんが、絵本を書いたみやざきあゆみさんに栽培法などを説明した=兵庫県姫路市の「山陽種苗」で
写真「ど根性ダイコン」の再生に携わる川口大助さんと自作の絵本を手にするみやざきあゆみさん。ハウスの中では大ちゃん2世が育つ=兵庫県姫路市の「山陽種苗」で

       ◇     ◇

 兵庫県姫路市にある「山陽種苗」のビニールハウス。二つの畝に青々と葉をつけた大根が27株ずつ並ぶ。

 あの「大ちゃん」の2世たちだ。大きい葉は長さ15センチほどに育ち、根も直径3センチほどに太ってきた。

 係の社員川口大助さん(29)は「大ちゃんが危篤になったストレスのせいか、2世は花粉ができないので、隣に花粉を出す相方の大根54株を植えています」と説明する。

 大ちゃんが相生市の歩道で発見されたのは05年10月7日。その1カ月後、路上に出た部分が何者かに折られてしまったため、間もなくしおれ始めてしまった。

 生命をつないだのはバイオ技術だった。昨年2月、「延命」を申し出た住友化学の子会社「住化テクノサービス」(同県宝塚市)に、「危篤」の大ちゃんが運び込まれた。洋ランの大量生産などに使われるメリクロン(組織培養)技術を使って、1ミリ未満の生長点と呼ばれる細胞が切り取られ、培養剤で発芽・発根が試みられた。

 大ちゃんは間もなく枯死。だが、細胞から発芽し、遺伝子的には全く同じ20体余りのクローンができた。社員で農学博士の高市みゆきさんは「健康なら7〜9割の確率で培養できるが、枯れかかっていただけに気を使った」と振り返る。

 クローン2体が山陽種苗に託され、採れた種が今年1月に植えられた。

 発見から2世の誕生――。大ちゃんはひとりの女性の人生をも変えていた。みやざきあゆみさん(34)は昨年3月、絵本「がんばれ大ちゃん」を出版した。実話をもとにした物語だ。今年3月には続編「もっと!がんばれ大ちゃん」を出し、子どもや親との交流を描いた。市内の幼稚園では今も絵本の読み聞かせが続いている。

 みやざきさんは14年間勤めた相生市役所を今年1月に退職し、カラー・アートセラピスト(色彩・芸術療法士)として活動するため、市内にアトリエを開設した。短大で美術を学んでいた頃からの夢だった。「不安だったが、大ちゃんに勇気をもらった。心の赴くまま、好きな色で表現していくことが、心を癒やし、元気にする。その楽しさを伝えたい」

 相生市は戦前から造船のまちとして栄えた。しかし、造船不況とともに火が消えたようにさびれ、74年の人口4万2000人をピークに今は3万2000人まで減っている。

 「市民にとって、路傍の大根は珍しくもない。大ちゃんブームは市外、県外から始まった」というのが、富山恵二・市まちづくり推進室長(49)の実感だ。「造船業に就いて一時相生に住んだ人もおり、全国に相生をふるさととする人が散っている。報道で相生が話題になったうれしさから、実家や友人への電話が殺到した。市民はそれで初めて、大ちゃんの話題性の大きさに気づいた」と言う。

 姫路市のビニールハウスで育つ大ちゃん2世は、白い花をつける4月下旬にミツバチによる交配を経て、7月には1万粒の種が採れる見込みだ。この夏、相生市では市内の畑に種をまき、特産化を目指して大ちゃん3世の栽培に乗り出す。

PR情報

このページのトップに戻る