膝栗毛展 なかなか楽し2007年06月26日 奈良市山陵町の奈良大学博物館で開かれている「一九と『膝(ひざ)栗毛』」展が、なかなかにおもしろい。ベストセラー作家・十返舎一九(1765〜1831)の人気に乗ろうとした海賊本があるかと思えば、貸本用にわざわざサイズを大きくした本やら、カバー付きで大事にしまわれていたらしいものもある。江戸後期から明治にかけての人々が本とどうつきあっていたかがわかる、楽しい展覧会だ。8月5日まで。
■売れればシリーズ化 会場に入るとすぐ、「東海道中膝栗毛」18巻が並んでいる。その脇に「浮世道中膝栗毛 全」という1冊があった。収集した永井一彰教授(近世国文学)に聞くと「版元はまず『全』を刊行して様子を見た。それが売れたので、続編、シリーズ化と続いたのです」。現代の劇画も、単発企画が売れれば雑誌連載になるケースがある。今も昔も、出版産業の手法は変わらないらしい。 隣には「膝栗毛 発端」なる本もある。「シリーズが売れたので、膝栗毛以前の弥次喜多(やじきた)を描いた本が出版された」という。サラリーマン漫画「課長島耕作」(弘兼憲史作)が爆発的人気を得て、主人公の青春時代を描いた「ヤング島耕作」が登場したことを思い出した。 ■貸本用は別サイズ 膝栗毛シリーズの本は、「中本(ちゅうほん)」(縦19センチ、横13センチ)というサイズが一般的。会場には一回り大きい「半紙本」(縦24センチ、横17センチ)もあるが、この大きさでも印刷されたスペースは中本と同じ。余白が目立つ。 この半紙本、実は貸本に使われた。余白は、たくさんの人がページをめくっても指の汚れや傷が文字や絵につきにくいようにするためという。裏表紙には「また貸しするな」「ネズミにかじらせるな」といった注意書きがあった。 ■実はカラフルだった 展示された本はほとんど単色で、絵のない表紙の地味な装丁。このスタイルで売られていたのだと思ったら、店頭ではカラフルなカバー付きだったそうだ。今回はそんなカバー付きが3冊紹介されている。ほかに、購入者が自分でカバーを作った1冊もあった。 本を読み始めると、カバーはじゃまになり、捨てられることが多い。そのため地味な表紙の本体だけが残されるらしい。逆に言うと、今もカバー付きで残る本はほとんど読まれないまま保管された証拠で、見つかることはまれだという。 ■挿絵が楽しい 滑稽(こっけい)本のおもしろさはやはり、挿絵の楽しさ。一九の版元が出した「正本」では1ページにさりげなく描かれた絵が、人気をあてこんで出版された海賊本では大げさに2ページにわたっている。 文明開化の明治になって、新聞記者もしていた戯作(げさく)者仮名垣魯文(かながきろぶん)(1829〜94)らが書いた「西洋道中膝栗毛」では、インドで象に出会ったり、エジプト・カイロでイスラム寺院前を馬車で通ったりする弥次喜多が描かれている。 ちなみに、海賊本は簡単に作れたらしい。永井教授によると「正本を買ってきて、ページをばらし、裏返して版木に張り付ける。それを彫ればいい」のだそうだ。 × × × 同展は無料。開館は原則として、月曜〜金曜の午前9時〜午後4時半と土曜の午前9時〜正午。問い合わせは同大学(0742・44・1251)。 PR情報この記事の関連情報コミミ口コミ
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