キミロール、人気です2007年11月28日 「キミロール」って知っていますか。1日100本売れる日もあるという大人気のスイーツで、大阪・十三の洋菓子店で売っているのだが、実は店頭には置いていない裏メニュー。宣伝しているわけでもないのに口コミで人気が広まった。店主の元へは百貨店から出品の誘いが絶えないが、すべて断っている。「目の前のお客さんが喜んでくれるのが一番大事」と、小さな店にこだわり続ける。
阪急・十三駅の東。駅前のアーケード街から人通りの少ない路地を百数十メートル入ったところに「ホルン洋菓子」はある。 店頭のガラスケースには、フルーツをふんだんに使ったショートケーキが並ぶ。でも、この店一番の人気商品はケースにはない。客が「キミロールください」と言って初めて、店員は店の奥からおもむろに長細い紙箱を取り出す。 ◇トロのように 見た目は長さ24センチの何の変哲もないロールケーキ。それなのに、実際に食べてみると、体験したことのないしっとりとしたやわらかさに驚く。「日本人は歯ごたえのある肉料理より、刺し身が好き。マグロのトロのように舌の上でふわっととろける生地を目指した」と店主の山本真平さん(67)。 山本さんは「手に職をつけなあかん」という父親の方針で、中学を出てすぐ、新聞の求人で見つけたまんじゅう屋に住み込んで働いた。だがなかなか給料は上がらず、「いつか自分の店を」と夢見て少しずつ貯金し、72年に独立したときには妻子持ちになっていた。家族を養うためにも「他人と同じもんをやっとったらアカン」。思いついたのが、卵の黄身だけで作るケーキだった。 卵の白身は熱を入れると粘りが出るので、ケーキ生地には欠かせないというのが当時の常識。山本さんは黄身だけでもパサパサしない生地を目指して、砂糖や小麦粉の配分や、かき混ぜ方に工夫を重ねた。試作品のため店頭には出さず、欲しいと言ってくれるお得意様にだけ売った。今も店頭に並べないのはその時の名残だ。客の意見を聞きながら、徐々に、黄身ならではのしっとりとコクのある生地ができあがっていった。 最初は1日に数本しか売れなかったが、86年に雑誌に取り上げられた頃から売れ行きが伸び始めた。今では東京からの出張客が「おみやげに」と10本、15本と買っていく。後日、別の人が「人からもらったら、おいしかった」と言って、また買っていく。口コミでお得意様が増えていった。 ◇目が届く品を うわさを聞きつけた百貨店から「催しに出品しませんか?」という誘いがひっきりなしに来る。「もっと人通りの多い場所に支店を出したら?」と言ってくれる金融機関もある。それでも他には一切出品せず、十三の小さな店にこだわり続けた。「ケーキは手で作るもの。自分の目の届く範囲でないと、納得いくもんは作れへん」 宣伝はしない。店のホームページもない。大学卒業以来、父と一緒に20年近くケーキを焼き続ける長男の裕(ゆたか)さん(41)も言う。「オヤジも自分も器用にはできひん。大事なのは店に来てくれるお客さん。期待を裏切らんよう、変わらない味のケーキを作り続けたい」 キミロールは1本800円。発売から30年以上据え置いた価格だったが、小麦粉などの材料の値上がりに苦しみ、12月1日から1本900円になる。問い合わせは同店(06・6301・2070)。 あなたの口コミ募集中!
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