厚さ0.8ミリ 九谷焼文字盤の腕時計、4月発売へ2008年03月04日 薄い円盤上を細い筆がゆっくりと動き、空白が埋まっていく。九谷焼の絵柄を文字盤に描いた腕時計に、培った技術を生かす。伝統工芸の本物を身近に感じてもらい、新しい用途を探りたい――。4月の発売に向け、石川県の加賀九谷陶磁器協同組合=山本長左・理事長(55)=の作家30人が、追い込みに入っている。
伝統の九谷焼の皿やつぼは、五彩や赤絵、金・銀も使った重厚な製品が多く、飾る場所の広さ、和風か洋風かなどを目安に作っていた。だが、石川県内の生産額は90年度の165億円をピークに、06年度は53億円と3分の1に、携わる事業者は634から316に半減している。 腕時計の文字盤に求められるのは、まず時間が読み取りやすいこと。そして使う人の服装やセンスなども考え、どんな人を目標にするかなど、作り手が想定しなければならない項目が増えた。 まず着手したのは、九谷の絵柄が描ける素材選び。条件は直径35ミリ、絵の具を含め厚さ1.2ミリで、焼いた時に絵の具がはがれず、反りやゆがみが出ないもの。九谷焼の素材では条件を満たせない。IC基板などにも使われるアルミ素材に、九谷焼の陶土をわずかに入れたセラミックの文字盤は厚さ0.8ミリ。 九谷焼は皿やつぼ、食器などに、絵柄を描き、焼き上げて完成する。が、腕時計となるとこうはいかない。まず、高級感があって使いやすい形のケースを作り、九谷焼の文字盤をはめ込むことになる。デザインは地元の工業デザイナーに依頼し試作を繰り返した。 「恥ずかしいが、これまでパッケージングは考えたことがなかった。物作りの難しさを初めて知った」と山本理事長。 試作品の文字盤を描いた加賀市大聖寺緑が丘町の福永幾夫さん(46)は、最初に試作した絵柄が針が見えにくかったため、赤を使った唐草模様にした。「細やかな絵柄は、小さな杯の底に描くのと同じだが、絵の具の厚さを0.2ミリ以内にするため、厚く塗らずに色素を多くして、普段の色が出るよう工夫した。やりがいはありますよ」と話した。 多品種・少量生産の九谷焼が、大量生産の腕時計へ進出するという試み。文字盤の絵柄は、工業的な手法なら1度焼くだけでつけることはできる。だが、狙いは「世界でたった一つの時計」だ。 九谷焼を楽しみ満足してもらうこと。山本理事長は「省エネの時だが、描くたびに焼く本来の手法でやってこそ九谷焼。伝統工芸の手法だけでは、化石になってしまう。大量生産できるハイテク素材を使いながら、手作りの希少生産で、ぜいたくな本物を知ってもらいたい」という。 1次発売の4月1日には、それぞれ異なる文字盤の腕時計50個が並ぶ予定だ。 PR情報この記事の関連情報コミミ口コミ
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