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苦難2度越え、野球の夢再び 神戸コスモス・前田さん

2008年05月17日

 神戸市で17日に開幕する第16回選抜全国身体障害者野球大会に、病気や事故で野球をできない状態を2度にわたり乗り越えた大学生、前田広太さん(22)=大阪府吹田市=が出場する。神戸市の障害者野球チーム「神戸コスモス」の外野手中井三朗さん(29)=同=が、左腕だけでプレーする姿をテレビで見て励まされた。2人はいま神戸コスモスのチームメートで、一緒に同大会12連覇を目指している。(渡辺芳枝)

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4月に入団した前田広太さん(右)と、左手でバットを持つ中井三朗さん=兵庫県高砂市高砂町

 前田さんは生まれつき皮膚の病気で、日光を長く浴びることを禁じられていた。物心ついた頃から清原和博選手にあこがれ、野球中継を欠かさず見てきた。小中学校時代はグラウンドで野球する友人がうらやましかった。

 高校入学時に手術をして体調が安定。高校2年で念願の野球部に入部し、毎日誰よりも早くグラウンドに出て練習し、正選手の座をつかんだ。進学した大阪経済法科大学でも軟式野球部に入った。

 大学2年の4月だった。奈良県での試合の帰り道、カーブで中央線を越えたトラックが、前田さんの運転する乗用車に正面衝突。前田さんは首の骨を2本折って右半身が動かなくなり、左足の感覚もなくなった。

 リハビリで少しずつ歩けるようになった3カ月後、病院の中庭で父親とキャッチボールをした。思い切り投げたボールは、約5メートル先でぽとりと落ちた。病室で1人で涙を流す日が続いた。

 野球から離れて2年がたった昨年6月。家でテレビを見ていて、片腕で野球をする中井さんの姿が目に飛び込んできた。同じ高校の野球部の先輩だった。高校2年時のバイク事故で右腕が動かなくなったのに、50メートルを6秒0で走り、障害者野球の日本代表に選ばれるなど第一線で活躍していた。「もう一度野球をしたい」。前田さんは神戸コスモスの入団テストを受け、4月にチームの一員になった。

 11日に高砂市であった「こうのとり杯争奪戦」の2回戦では、1番センター中井、2番ライト前田で先発出場した。前田さんは今も右手首から先が動かない。気を抜くと右足から力が抜けて転びそうになる。それでも左腕に力を入れてバットを振り、2打数2安打の活躍でチームの勝利に貢献した。

 前田さんの今の目標は「中井さんのような選手になって、昔の自分のように絶望している障害児に希望と勇気を与えること」だ。中井さんは「前田君の身体能力は高い。互いに刺激しあって頑張ろう」とエールを送っている。

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