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自転車タクシー、発車でごわす 鹿児島 レトロな篭型

2008年05月21日

 鹿児島県内では初めてとなる自転車タクシー「かごりん」の運行計画がある。法の壁が厚い二輪や三輪ではなく、車と同じ四輪にしたのがミソ。排ガスを出さず、繁華街のヒートアイランド対策にもつながる。明治期の馬車や人力車を参考に、維新の立役者が輩出した鹿児島にぴったりのレトロな外観に仕立てた。(古城博隆)

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「かごりん」を試験運転する中村剛康さん=鹿児島市東千石町

 姶良町の中村剛康(たかやす)さん(35)が考案。鹿児島市中心街の天文館にある起業家支援施設で温めてきた構想だ。鹿児島や客車の籠の「かご」と車輪の「りん」をひっかけた。

 大人2人が座れる客車と自転車が一体となった特注品。全長270センチ、幅95センチ。自転車メーカーを退職した知人に頼み、製作費に60万円を費やして約2カ月で完成した。

 福昌寺跡などの鹿児島駅周辺の史跡を観光客を乗せて巡ろうと、地元の町内会や商店街と交渉中だ。軌道に乗れば、台数を増やし、天文館やドルフィンポートなど鹿児島市中心部の観光地を案内するほか、かごりんを軽トラックに載せて県内各地に出張するサービスも考えている。

 運賃は初乗り500メートルで500円、100メートルごとに50円を追加するメーター方式と、1時間2〜3千円の時間貸し方式を検討中。自転車や客車の側面や座席後部の広告収入で経営の安定をめざす。

 自転車タクシーは景色をゆっくりと楽しむことができる。主流はドイツ生まれの「ベロタクシー」。熊本など国内約20都市で行われている。三輪でたまご型のおしゃれなデザインと、小さな力でよく走る省エネ構造で、完成品として輸入されて広まった。

 だが、中村さんは「鹿児島の街並みに溶け込むように」とあえて外観を古風にした。東京・江戸東京博物館で展示されている三輪タクシーの寸法を測って設計の参考資料にし、外観は浅草の人力車や馬車をイメージ。当初、三輪にするつもりだったが、製作者から「運転手の座席の下に一つ車輪を入れた方が安心」と提案され、四輪になった。

 これが奏功した。県警交通企画課によると、県内ではベロタクシーを始めたいという相談はあったものの、原則として二輪や三輪の車両の二人乗りを禁じた道路交通法施行細則が壁になってきた。ベロタクシーが走る他県では県公安委員会が細則の改正をしたり、地域限定で特例として認めたりする手続きを取っている。だが、四輪のかごりんは人力車や荷車と同じ軽車両に分類され、法規制はない。

 かごりんで電力が必要な部分は方向指示器と停止ランプだけ。動力は充電式乾電池8本と「人並み程度」(中村さん)という体力だ。いかに楽にこげるか、ギアの比率やコース設定について試行錯誤している。

 中村さんは千葉県で生まれ育ち、昨年3月まで同県内のコンピューター専門学校で教師をしてきた。「若者にけしかけるだけでなく、自分でも何かやりたくなった」と考え、母の実家のある鹿児島に来た。

 起業家を支援するNPO法人「ネイチャリング・プロジェクト」(鹿児島市)と、九州にメガネ店チェーンを展開するヨネザワ(熊本市)の支援を受け、事業化をめざす。天文館に店がある同社は社会貢献の一つとして、事業を起こそうとしている人たちに店の上階を貸し出している。米沢房朝社長は「商店街はどこも厳しいが、いろんな発想を持っている若者の支援で活性化に役立てれば」と話す。

 このほど試乗した天文館本通商店街振興組合の樋口弘文理事長は「レトロな雰囲気が天文館に合っており、観光客を乗せて走る姿が日常的になると活気やにぎわいが出ていいですね」と期待した。

 県警の担当者は「安全第一。前例がない乗り物のため、構造や走行について助言をしていきたい」と話す。中村さんは安全面を含めて準備を進め、今月中に営業を始めたいという。

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