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拳銃チラリ、通訳が金巻き上げられる 風間さん

2007年06月28日

 ◆6月25日 月曜日 (携帯より)

写真深い水たまりを幾つも渡る
写真愛車のYAMAHAマジェスティ
写真ワレラさんの牧場
写真真夜中に親切にしてくれたワレラさんと星を見上げる
写真360度の大平原に囲まれて思わず叫ぶ!
写真牛も羊も、みんな勝手に自由に一日中、遠くまで散歩に出かける

 濃い霧につつまれたロシアの田舎町。ここのところ毎日そうだが、朝から昼にかけては晴れ、そして午後になると重い雲がたれ込めてきて、夕方になると激しい雨が降る。

 道は昨日と同じ、新しく出来た広いダート道(未舗装路)。行く手がいったいどんな道になっているのか? そして、どこに続いているかも分からない。

 今日も素晴らしい大自然に感動しつつ、ひたすらバイクを走らせた。

 ここぞ! と思う川でルアーも投げてみた。が、反応はなし。

 やがて予定どおりの雨、道が泥沼化したら出られなくなる。暗くなったら終わりだ。恐ろしい綱渡り。

 340キロ。今日も10時間の走行。モコジャの町に着いた。

 ◆6月26日 火曜日

 正直を言えば、天候にさえ恵まれればチタまでの2000キロは何とかなる、というのが最初の実感だった。ところがである。やはりここは最果てのロシア横断道路、しかも工事中。ドロ沼、穴ぼこ、石コロ、急な坂、川渡り、世界広しといえどもここまでひどい悪路は無いだろう。午前8時に走り出し午後1時で走行70キロ、今日一日の予定では次の村まで400キロ以上は走らなければならない計算である。焦った。この分では到着は夜中だ。ドロだらけの峠越え、ブルドーザーの合間を縫って走った。

 それでも「いや、必ずいい道になる!」と、いつでもどこでも楽観主義。村を抜け、川を渡り、つらさも旅の「味」とばかり性根を据えてハンドルを握る。

 午後6時、ようやく深い山を抜け里に出た! そこから先、しばらくの間360度の大平原の中を美しいアスファルト道路が続く。握り拳を挙げ、一人思わず歓声をあげる。もしやこのままチタまで? 何時ものことだが甘い考えはすぐに裏目にでる。あっという間にもうもうと砂ぼこりの立ち込めるダートへと舞い戻り。

 夜の9時、ようやくネルチンスクに到着。今晩の宿は無人のコンドミニアムのような建物だが、元は牢屋(ろうや)らしい。荷物を降ろしているところへサングラスの男たちが3人車に乗って現れた。「中に入って!」と僕の通訳君。外の気配が怪しい。問答の末、通訳君は脅されて現金を巻き上げられてしまった。何を腰抜けが! と思うが胸には拳銃も見えていたと聞けば穏やかではない。「明日の朝もまた来ると言っていたから、今のうちにチタに向かって走りましょう!」と通訳君。

 仕方なく、今日一日12時間半も走ったあげくに、また夜のダートを時速100キロで激走(逃走)するはめに。

 とりあえずは、来る時に見かけたガソリンスタンドへ。そこで「どこか泊まるところは無いでしょうか?」と聞いてみた。おばさんはニコリと笑いながら「ここから5キロ行ったところに私の牧場があるから泊まりなさい。向こうに主人がいるからこの手紙を持っていって!」と言ってくれた。聞くとおばさんはブリヤート人だと言った。きっとこっちの顔を見て親しく思ってくれたに違いない。夜道を牧場に向かう。犬が激しくほえ立てる中、恐る恐る牧場の柵(さく)の中に入る。出てきたおじさんに事情を説明すると、おじさんはにこやかに家の中に招き入れ、洗面用の水とお茶、そしてベッドまで用意してくれた。夜空には満天の星が輝き、長い長い一日が終わった。

 ◆6月27日 水曜日

 朝、牧場のワレラさんの家で目を覚ます。悪夢のような昨夜、そして転じて平和な牧場の朝だ。朝日が大草原を照らし、今日がまた始まるのだ。

 ワレラさんが搾り立ての牛乳とパンケーキを焼いて出してくれた。

 外に出てみると羊289頭、牛31頭、鶏47羽、ターキー12羽、豚15頭。これに飼い犬4頭も交えて、すべての動物たちが、互いの柵を越えまったく争わず仲良く自由に暮らしている。豊かな自然の中に暮らすと本来はみんなそうなのかも知れない。ここにいる動物たちは世界一幸せものだと思った。

 ガソリンスタンドで働くおばさん(スベタさん)が見送りのためにわざわざ牧場に帰ってきてくれた。お礼に少しのお金を紙に包んで差し出すと、怒ったようにおじさんもおばさんも「受け取れないよ、これは友達だから」と言う。世の中には銃で脅かしお金を取る人もいれば、あげようとしても受け取らない人もいる。しみじみと人の世の難しさを感じながら、牧場をあとにした。

 260キロ走行後、ようやくあこがれのチタに着く。

    ◇

 風間さんのコラムは、アサヒ・コムの「愛車ページ」でもお読みいただけます。

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