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コミミ口コミ鉄道

逆境けちらせ、再生車両

2008年01月05日

 JR北海道がユニークな乗り物の開発に懸命です。昨秋、廃車寸前の気動車を改造し新型ハイブリッド車両を開発しました。試験的な営業運転に入った「デュアル・モード・ビークル(DMV)」は、線路と道路の両方を走る話題の車両です。

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「イノ・テック・トレイン」とその名を刻んだハイブリッド車両=ともに札幌市のJR北海道・苗穂工場で

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ハイブリッド車両の構造を説明する柿沼博彦副社長

■軽い・小さい・安い・追求

 札幌市のJR北海道・苗穂工場。車体に「イノ・テック・トレイン」と刻んだ新型ハイブリッド車両が姿を現した。

 「技術革新(Innovative Technology)で生まれた列車との意味を込めた」。開発を率いたJR北海道の柿沼博彦副社長(64)が明かした。

 試作車は北海道内のローカル線を走った気動車がベース。製造から11年。退役が迫っていた。

 ハイブリッド車とは二つの異なる動力源を備えた乗り物のことだ。軽油が燃料のディーゼルエンジンで走る気動車を改造し、モーターを加えた。

 ディーゼルエンジンは地球温暖化につながる二酸化炭素などの排ガスをまき散らす。既存のエンジンでは出力アップも限界だ。

 克服のカギは電車の導入だが、電化のインフラ投資は「1キロあたり1億円はかかる」。

 JR北海道は、利用客が少なく、採算がとりにくいローカル線を数多く抱える。営業距離は約2500キロと長い。毎年、300億円程度の営業赤字。勢い、JR北海道の電化率は17.5%とJR各社で最低。JR東日本、JR東海は70%前後で、その差は大きい。02年秋から取り組んだのがハイブリッド車両の開発だ。

 長い距離をより速く走る必要がある北海道の鉄道事情をふまえ、JR北海道のハイブリッド車両は、「軽い、小さい、安い」を追究した。

 昨年秋に完成した試作車はモーターで車輪を回し、駅を出発する。その後はエンジンの駆動力を加えて速度を上げる。

 ブレーキをかけた際に生まれたエネルギーも無駄なく回収、モーターを発電機として使い、バッテリーに蓄えて動力源とする。二酸化炭素の排出量が減り、燃費も従来の気動車に比べ、20%近く改善できた。

■特急視野 時速140キロ目標

 世界の鉄道で初めてハイブリッド車両の開発に成功したのはJR東日本。その仕組みは、JR北海道とは根本的に異なる。エンジンで発電機を回し、モーターを動かして走る。発電所を内蔵した電車だ。

 柿沼副社長は考えた。「将来はエンジンの代わりに燃料電池を使う想定だろう。だが、燃料電池の実用化はまだまだ先ではないか」

 バッテリー装置の重さは約550キロにした。JR東日本の半分だ。発電機の役割はモーターが担う。

 JR北海道が持つ車両は約1000両。その半分が気動車だ。動力装置を小型にすれば、既存の気動車の改造でハイブリッド化ができる。しかも、バッテリーの導入コストは1両あたり約3000万円。JR北海道は「JR東日本のような方式でハイブリッド車両を作るのに比べコストは半分程度で済むはず」という。収益力に見合った開発に期待がかかる。

 JR北海道は3年後をめどに実際に客を乗せて走る試作車を作る。特急列車のハイブリッド化も計画している。

 技術チームは振り子の原理と空気バネを使ってカーブでは車体を大きく傾けて高速のままで走る技術も開発している。ハイブリッド技術と組み合わせれば「最高速度が時速140キロと現行より10キロ速く走れる」という。北海道新幹線の新函館開業をにらみ、函館―札幌間の高速化に取り組む考えだ。

■個性に変える発想力

 「ハンディ(逆境)を個性に変える」――。柿沼副社長が掲げる技術開発のコンセプトだ。

 柿沼副社長は、マイクロバスを改造した線路・道路両用の「DMV」の生みの親。出発点はこの発想だった。

 線路と道路を走る車両の開発は1930年代から国内外で始まったが「発想が鉄道屋だった」と柿沼副社長。重い鉄道車両を道路で走らせようとしてもスピードが出ずに開発は頓挫した。

 DMVは利用客が少ないローカル線対策として生まれた。ならば「利用客に応じた車両の大きさにすればよい」と、マイクロバスの改造を思い立った。すると、レール幅とぴったり。鉄輪とともにタイヤがレールに乗り、動力を伝えるしくみが実現した。雪道を走るスタッドレスタイヤの装着でレール上も滑らない。「バスからの発想」が奏功した。

 栃木県佐野市下彦間町の出身。鉄道のない山あいの町だ。

 「竹林を駆け、竹細工で遊んだ。工夫を繰り返すうち柔軟な発想が身についた」

■手本は旭山動物園

 ハンディを個性に変えた成功例として、柿沼副社長は北海道の旭山動物園を挙げる。旭山は敷地も限られ、珍しい動物もいないが、動物をありのままに見せる「行動展示」という工夫で全国的に人気となった。

 DMVも、利用客が少ないハンディがあったからこそ生まれた。昨春からJR釧網線で始まった試験的な営業運転には国内外から視察が相次ぐ。新幹線は確かに最先端の鉄道技術だが、在来線の技術も発想次第で生きてくる。こうした発想は、鉄道界の旭山動物園だ。

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