島田雅彦さん「読むに堪えない」 ケータイ小説に挑戦2008年01月18日 「ケータイ小説は、おじさんにとって読むに堪えない」「おもねる気はない」。泉鏡花文学賞などを受けた作家・島田雅彦さんが、「ケータイ小説」に挑戦する。20日から朝日新聞朝刊で連載が始まる「徒然王子」を、朝日新聞の携帯サイト「朝日・日刊スポーツ」で同時掲載する。新分野に挑む意気込みを聞いた。(アサヒ・コム編集部)
「徒然王子」の携帯向け配信で、新しい島田雅彦ファン、新規読者をどのくらい獲得できるのか――。 「まったく未知数。でも、今年は運勢が向いてくるらしいので、そこにかけてみたい。アクセス数がそのまま社会的影響力とは結びつかないところがネットの落とし穴。だから、アクセス数より影響力のほうを重視したい」 そう断言する島田さんは、ネットを駆使し、さまざまな情報を発信中だ。 公式ホームページ「彼岸百貨店」のほか、公式ブログ「NARCOSHAMANのお告げ」も自分で管理。携帯はキーボード付きの最新鋭に変えたばかりで、映像発信にも手を染めている。「ネットは貴重なツール」と自覚する。しかし、女子中高生らに支持され、書籍の売り上げランキングをにぎわすケータイ小説には注文がある。 「携帯電話の限られた画面の向こうに等身大の自分や人間がいるという環境。これで爆発的に広がったのだろう。ただ、会話でたたみかけていくケータイ小説の書き方はいまに始まったことではない。東海道中膝栗毛など、江戸時代の滑稽(こっけい)本とか、シモネタ満載の読んで楽しいエンターテインメントがいっぱいあった。そもそもケータイ小説の情報量は少ないなと思う。漫画から絵を抜いて、吹き出しの会話だけにしたのがケータイ小説。ひとつのジャンル分けをしていいのかどうか、いまも疑問がある。川端康成の小説は読んでみると、同じようにスカスカ。すんなり、誰でも読める小説。だが、それでいて、ある種の凄(すご)みがある。そこが違う」 「徒然王子」を携帯配信しようとしたのは「思いつきにすぎない」と、あくまでクールに語るが、大望がある。 「ケータイ小説のコアな読者におもねるように書く気は初めからない。ケータイ小説を読んでいる彼女彼らに対する迷惑かもしれないが、しいて言えば、教育してやるというくらいの気持ちはある」という。「歴史的なものを踏まえた内容や、一日一日読みがいのある情報量をもつ原稿、そうしたものが携帯で配信されることで、新しい読者が獲得できれば」 新聞小説をまな板に載せた理由は、こう語る。 「とても古い伝統的なジャンルとしての新聞小説は、ケータイ小説の対極にあるといってもいい。実際に両方読んでいる人は少ないんじゃないか。ケータイ小説を新聞小説にすることができないのなら、新聞小説をケータイ小説にすることはたやすいと考えた。新聞小説のルールで書いた原稿を、携帯という土俵に出してみたらどうなるのか。それが知りたい。ボコボコにされて、排除されてしまうかもしれないし、あるいはいままでケータイ小説を読まなかった読者の開拓につながるかもしれない」 ネットと出版は矛盾するものではなく、「両輪で進んでいく」と話す。舞台は膨大な会員を抱える「朝日・日刊スポーツ」。新しい挑戦を前に島田さんは「暴れるしかない」と宣言した。
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