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クラゲによる癒やし系空間 40年の研究が支え

2008年03月14日

 水のなかを悠然と漂うクラゲ。神奈川県藤沢市にある新江ノ島水族館のクラゲファンタジーホールは、40年を超す飼育と繁殖の研究を生かし、クラゲの生態を幻想的に見せてくれる。癒やし系空間を支える舞台裏をのぞいた。

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クラゲファンタジーホール(新江ノ島水族館提供)

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成体のミズクラゲ(新江ノ島水族館提供)

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ミズクラゲのポリプ(新江ノ島水族館提供)

 半ドーム形のホールには15種類のクラゲが展示されている。最も大きい水槽には、最も大きなパシフィックシーネットル。傘の直径は50センチ、長さは2メートルほど。米国カリフォルニアの水族館からやって来たという。

 体内に藻類が共生し、光合成でも栄養を得られるタコクラゲ。水槽の底にくっついてイソギンチャクにも見えるサカサクラゲ。毒が強く、その昔、忍者が粉末を敵に浴びせてクシャミをさせたとされるアカクラゲ。体長1センチほどしかないエボシクラゲもいる。

 最近、仲間に加わったサムクラゲは冷たい海が故郷で、他のクラゲを食べさせることで初めて大きく育ったという。

 広報担当の高井純一さんによると、前身の「江の島水族館」がクラゲの通年展示に取り組み始めたのは64年ごろだった。クラゲの一種、ヒドロ虫類を研究していた昭和天皇も水族館にしばしばやって来たという。

 「魚と違って販売する業者はなく、採集するしかなかった。長期飼育し、繁殖できないと、クラゲが死ぬたびに展示に穴が開く」という。

 試行錯誤を重ね、10種類以上を繁殖させられるようになったのを機に88年、前身のファンタジーホールが造られた。それが04年オープンの現施設に引き継がれている。

 いま、クラゲの展示を支えているのは、「クラゲ生産室」という100平方メートルに満たない部屋だ。学芸員の足立文さんら3人のスタッフが中心メンバーだ。

 クラゲの寿命は長くて2〜3年、短いと数時間。展示に支障が出ないよう文字通り「生産」し続けなければならない。

 それを可能にしているのが、保存できる「ポリプ」の存在だ。

 クラゲは受精してからしばらくすると、海中を漂う「プラヌラ幼生」となり、その後、ポリプとなって岩や貝殻につく。例外はあるが、米粒より小さいものが多い。

 ポリプ以降、クラゲにまでなるには刺激が必要だ。条件は種類によってさまざま。水温を上げたり、下げたり、塩分を調整したり、餌を減らしたりして刺激を与える。

 約60種類のクラゲのポリプがシャーレやタッパーに入れられ、常温の棚や16度と25度の保温庫で保管されている。必要に応じて成長させられる。

 もう一つのポイントは餌だ。海にはさまざまなプランクトンがおり、クラゲの好みもさまざま。しかし、水族館では、好みすべてにこたえるわけにはいかない。

 餌の中心は「アルテミア」というエビの仲間だ。シーモンキーとも呼ばれ、熱帯魚の餌として乾燥卵が売られている。赤みがかった粉末のような卵を25〜27度の海水に24時間浸すと泳ぎ出す。この水族館では1日120グラムの卵が使われている。

 ほかの微小生物や魚介類のすり身も餌になるが、アルテミアを食べてくれないクラゲは育てるのが難しいらしい。

 水族館は3年前から傘の直径が1メートルを超え、体重100キロにもなる超大型「エチゼンクラゲ」の繁殖にも挑んでいる。

 島根県沖などで直径30〜60センチの個体をとるが、体重が数十キロもあり、傷つきやすい。ポリ袋で包んだり、たるを海に入れてすくい上げたり、移動にも工夫を凝らす。

 同水族館で展示していた05年10月、水槽内で受精卵が取れ、世界で初めてポリプから小さなクラゲにまで育った。直径20センチぐらいで死んだが、ポリプは残っている。

 「新しいポリプも欲しいので今年も採集に行くつもり。生殖腺だけを切り取って人工授精する試みもしている」と足立さん。

 大学の研究者と協力して、クラゲの癒やし効果を科学的に調べる研究も始まっている。スタッフの夢は尽きない。

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