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釣り人らの笑顔励み 稚アユ年70万匹育む

2008年05月12日

 最大80トンの水が入る八角形の水槽。福島県双葉郡楢葉町の木戸川漁協の職員鈴木謙太郎さん(26)が姿を見せると、水面が細かくざわめきたつ。7万匹のアユが水面近くに寄ってきたのだ。間もなく県内の主な15河川に放流される。

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「釣り人だけでなく、四季を通じて魚たちと人が集まるような川辺にしたい」と鈴木謙太郎さん=楢葉町

 木戸川は阿武隈山地から約50キロを下り、楢葉町で太平洋に注ぐ。狭い川幅を埋め尽くすように、年平均10万匹のサケが遡上(そじょう)するさまが人気を集める。一方、河口近くにある養殖場ではアユの稚魚が年間70万匹も育成されている。

 鈴木さんは同漁協初の専業職員だ。釣り好き、魚好きが高じて、いわき市の海洋科のある高校に進んだ。2年生の秋、同漁協での実習でサケの遡上するさまに圧倒され、「年配の人ばかりで楽な仕事と思った」という伝統の合わせ網漁では筋肉がパンパンになった。「こんな世界は初めて」と思った。

 年平均180万粒を採取するサケの採卵、授精作業も経験し、「世話になった魚たちに恩返ししたい」。そう考えて卒業と同時に職員になった。自宅から片道約50キロの道のりを通いながら、10代でサケの孵化(ふか)場長になり、今はアユ育成の責任者でもある。

 「天然アユは下あごの両側に四つずつ黒い星がある」という。ダム湖に放流したアユの子孫が、従来にない独自の性質に成長することもわかった。日に日に育つ魚たちと、多くの釣り人や観光客の笑顔を想像するのが励みだ。

 「趣味の延長で選んだ仕事だが、希望を持って楽しくやってます」。今春、高校の後輩が後に続いてくれた。後継者不足が叫ばれる中、孵化・育成場を10代、20代の若者2人で支えている。(松本英仁)

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