肺がん闘病の画家、作品展「ロスタイム」 東京・銀座で2008年06月03日 肺がんで「余命半年」と宣告された後も絵筆を握る、埼玉県富士見市の画家キブシ=本名・木歩士(きぶし)富雄=さん(57)が、東京・銀座のギャラリーで2日から、6年ぶりの作品展「キブシトミオ展」を開いている。抗がん剤を飲む日々。それでも、めげずにいられるのは、家族そして好きな絵が描けるからだ。14日まで。(上田真仁)
東京・新宿生まれで、物心ついたときから絵を描くのが好きだった。87年に東京で初の個展を開き、その後も毎年のように作品を披露した。絵画と木版画を融合させるなど幅広い表現方法は、美術雑誌などで話題になった。 だが、これでもかと、病が襲った。盲腸が悪化した後、腸閉塞で1カ月入院した。退院後、外に出たくないし人とも会いたくない……という状態が3年も続いた。 そして、06年12月、健康診断で肺に異常が見つかり、大学病院で左肺の腺がんで「余命半年」と医師の宣告を受けたという。 診察室を出た後、「なにかおいしいもの、栄養のあるものを食べよう」と妻を誘った。向かったのはうなぎ屋。日本酒でほろ酔い気分になり「半年しか生きられないのか」と思うと涙が出た。 間もなく、千葉県柏市内の病院に入院した。しびれ、痛み、脱毛…と、抗がん剤の副作用に耐える日々だったが、病床でも1日1枚、窓越しに見える風景のスケッチは欠かさなかった。描いていれば気分がいいからだ。 「妻は健康なときと同じように接してくれた。妻がふさぎがちだと、心配で私もふさいでいたでしょう。妻には感謝です」 昨年3月と10月、妻と連れ立ち静岡・熱海沖の初島と、妻の出身地の岩手・宮古を旅行した。目の前にひろがる海が気持ちを楽にしてくれ心地よかった。 このときの海の絵2枚と、千葉県の病院で描いた富士山の絵など計25点を展示、販売する。作品展の副題は「ロスタイム」にした。「余命半年と言われたのが06年12月4日。それでも、今も生かされている。変な言い方かもしれないが『もうかった人生』」と語る。いま、気力が徐々に回復しているという。 作品展には妻と東京芸大2年の長女も1点ずつ出品するという。作品展の会場は東京都中央区銀座1丁目「ギャラリーツープラス」(03・3538・3322)で正午から午後7時まで。9日は休廊、最終日は午後5時まで。 PR情報この記事の関連情報 |