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金刀比羅宮 書院の美−応挙・若冲・岸岱−
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「金刀比羅宮 書院の美」展 古典・洗練・再発見

(08/09)

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円山応挙「遊虎図」の白いトラ。1頭ずつ特徴が描き分けられたトラたちは存在感にあふれている
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伊藤若冲「花丸図」。展覧会場では実物と複製で奥書院「上段の間」を再現している
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岸岱「群蝶図」(部分)。障子の上の壁面に描かれており、展覧会場では高精細の複製で再現されている
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邨田丹陵「富士巻狩図」。騎馬武者らがシカ狩りに興じる、躍動感ある襖絵

 江戸時代の絵画史で注目される円山応挙、伊藤若冲(じゃくちゅう)、岸岱(がんたい)。東京・上野の東京芸術大学大学美術館で開催中の「金刀比羅宮 書院の美」展では、3人の名作を一度に味わえるのが楽しみの一つだ。名匠たちの襖絵(ふすまえ)が持つ日本画としての魅力を、金刀比羅宮の障壁画に詳しい山下裕二・明治学院大学教授に解説してもらった。

 ◆揺るがぬ名品、未知の大作 明治学院大学教授・山下裕二

 展覧会のサブタイトルは「応挙・若冲・岸岱」。江戸時代の絵画史をあらためて考えてみるためには、象徴的な3人だと思う。

 まず、日本の絵画に圧倒的な影響力を持ち、評価が揺るぎない応挙。水墨画、やまと絵、洋風画など、それまでのあらゆるテクニックをとりこんだ画風は、瞬く間に当時の画壇を席巻した。

 その文句のつけようがない完成度は、明治以降の日本画家にとっても最高の規範であり続けた。展覧会で、虎の微細な毛描きや「山水の間」の空間構成を体感して、応挙の実力を再認識する人も多いだろう。

 若冲の場合、10年ほど前まで、その真価を知る人はごく一握りだった。だが、2000年の「若冲展」(京都国立博物館)を機に「若冲ブーム」ともいうべき現象が起きた。昨今では日本美術史上、最高の人気画家と言っても過言ではない。

 04年、金刀比羅宮の「平成の大遷座祭」で「花丸図」が公開された際は、たいへんな行列ができた。石段を登った末に、大行列に恐れをなして入場をあきらめた人も多いだろう。この機会に、むせかえるような濃密な画面を至近距離で味わってほしい。

 岸岱の場合、その名前や作品を脳裏に刻んでいる人は、ごく少数だろう。私自身、あらためて注目したのは数年前のこと。長押(なげし)の上に描かれた「群蝶図(ぐんちょうず)」の浮遊感がたまらない。また、柳の間の白鷺(しらさぎ)は、まるでアニメーションのように画面の中を移動する。まちがいなく、これから再評価の機運が高まる画家だと思う。

 ようするに、この3人の画家は、江戸時代絵画に対する評価史の、過去・現在・未来を象徴する存在なのだ。

 しかも、金刀比羅宮には、この3人のみならず、驚くべき未知の実力派が障壁画を遺(のこ)している。

 1902(明治35)年、邨田(むらた)丹陵が描いた「富士巻狩図(ふじのまきかりず)」は、驚くべき描写力を示す。武者絵の伝統に、洋画的な陰影表現が加味されている。しかも襖絵を開けば、隣室の巨大な富士が見えるという空間構成が圧巻だ。江戸時代絵画の豊饒(ほうじょう)な表現力を受け継いだ、知られざる実力派として、展覧会を機に丹陵の研究が進むことを期待している。

 こんぴらさんの懐は驚くほど深い。展覧会で公開される作品は、ごく一部。いまだ私も知らない作品が、さらに眠っているにちがいない。

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 東京芸大大学美術館で金刀比羅宮展、開催中(9月9日まで)



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