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〈山形を見つめる8〉 野球留学 弱点克服へ親元離れ 

2006年06月14日

 優勝の瞬間、酒田南の山本斉はマウンドで両手を高々と突き上げた。「甲子園は夢だったんです。最高にうれしいです」と目を真っ赤にして喜んだ。

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県大会準々決勝の日大山形戦に先発した山本斉。3回、突然崩れ大量失点で降板した=5月21日、米沢市営野球場で

 昨夏の全国高校野球選手権山形大会決勝。同校は選抜4強入りの羽黒に延長戦で競り勝ち、甲子園出場を決めた。山本は3回から登板し、8回2失点の好投、1年生ながら大役を務めた。

 甲子園では宇部商(山口)との3回戦に先発、4回途中、2点を奪われ降板した。山本にとって5カ月ぶりの「帰省」でもあった。

    ◇

 大阪市出身。小学1年から野球を始め、3年でボーイズリーグの「ジュニアホークス」に入った。4年の時には6年生のチームに「飛び級」、中学3年ではエースとして全国大会4強入りの原動力となった。

 将来有望の中学3年生には、全国各地の高校から入学の誘いが来た。清原和博(現オリックス)ら数多くのプロ野球選手を輩出しているPL学園(大阪府)、兄・潤が進学して甲子園に出場した中京(岐阜県)……。だが、山本が選んだのは酒田南だった。

    ◇

 酒田南に進めば寮生活になる。掃除や洗濯など身の回りのことはすべて自分でやらなければならない。毎日の練習でへとへとになっても、さぼることはできない。

 「高校を卒業してからも野球を続けていくには、精神的な強さを身につける必要があると思った。親元を離れて、自分の弱点を克服したかった」

 ジュニアホークスの時から指摘されていた精神面の強化。それを自覚しているからこそ、酒田南を選んだ、と山本は言う。

 昨夏の甲子園でも精神的な強さが大切なことを目の当たりにした。宇部商戦に途中登板したエース金本明博(現中日ドラゴンズ)は7回に7点を奪われた。「味方の失策などで切れてしまっていた。あきらめてしまったのがベンチからでも分かった。あれが一番よくないと思った」(山本)。プロに進んだ先輩だって反面教師にして自分を磨いてきたつもりだ。

 「でも、性格的なものなのか、なかなか直らない」。今春の県大会、日大山形との準々決勝で味方の守備のミスから集中力を切らし、3回に大量失点を喫した。西原忠善監督から「精神面が弱い」と厳しい言葉を浴びた。

 その弱点を克服しなければ今夏の甲子園は見えてこない。「そのためにここにいる。親元に居たままだったら何も変わっていないと思う」

    ◇

 信頼を寄せる先輩が酒田南に進学した影響もあった。二つ年上の北田亘(現・専修大)とはジュニアホークスで一緒だった。山本は「北田さんは野球センスが抜群だし、努力も人一倍。野手と投手でポジションは違うけど、学ぶところは多い」。

 北田からは「酒田南は野球に打ち込めるいい環境だぞ。選手同士の仲もいいし、手本になる投手もいる」と助言された。

    ◇

 「もしPLに進学していたら、昨夏の甲子園で自分がマウンドに立つことはなかったと思う」

 大阪は実力校がひしめく激戦区。甲子園常連校といえども、その道のりは楽ではない。実力のある選手が集まっているため、レギュラー争いも厳しい。

 PL学園のエース前田健太(3年)は今春の選抜大会で3連続完投勝利をあげた。山本はその力強い投球をテレビで見ながら、「すげえなあ」と思わず声をもらした。

 「あんな選手が周りにたくさんいたら、自信をなくしていたと思う」。甲子園への近道――。進路を決めるとき、そんな計算が働いたことも、認める。

    ◇

 「遠くに来すぎちゃったかな」と弱音が出るときもある。練習で疲れたときは「家でゆっくり休みたい」「大阪の友達と思いっきり遊びたい」とも思う。

 山本の部屋には大阪で撮った写真や大阪の友人から贈られた寄せ書きが大切に飾られている。壁には「なんでやねん」と書かれたタオルも掛けられている。

 同校には山本と中学時代からバッテリーを組んでいた清水隆弘、1年生からレギュラーの美濃一平らボーイズリーグ出身の選手が多い。「野球留学生」「よそ者」と呼ばれ、快く思わない人がいることも知っている。

 「しんどい。でも、自分で選んだ道だから……」。周囲の目さえ、バネにしなければ、強くなれない。もっともっとたくましくなって、甲子園に戻りたい――。山本はそんな思いを抱きながらマウンドに立とうと思っている。

=敬称略

(楠田裕司)


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