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球児のインタビュー、もっと感情出したら 萩本欽一さん

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【動画】高校野球への思いを語る萩本欽一さん=安藤嘉浩撮影

 ■未来へつなげ高校野球 私の提言

 高校生って子供のようにかわいい子もいれば、オッサンのような大人もいる。その両面を備えた不完全なところが魅力だよ。でもテレビでみる高校球児のインタビューでは答えがみんな一緒。「頑張ります」や、「応援よろしくお願いします」が多くて、感情が表に出てこないんだよね。

 例えば出られなかった子も含めて負けたチームの5人に客席に向かってマイク持たせてしゃべらせたらどうか。「俺、打てなかったんだ。情けねえなあ」とか自分の言葉で。お客さんも一緒に喜んだり、悲しんだり、共感してくれるよ。そうすると選手もまた「応援してくれる人のために」と頑張れる。

 そう思うのは、僕がつくった茨城ゴールデンゴールズというクラブチームでの経験が大きい。お客さんが一番喜ぶのはアドリブ。つまり予想していないことが起きることだった。

 チームを持って3年目、優勝した全日本クラブ野球選手権でのこと。九回裏に逆転した試合があったの。2死満塁。打ったのは東大野球部にいた子。母子家庭で、しっかり者の母親に育てられた。「おまえ下手だけど、母ちゃんなら打たしてくれる。母ちゃん、よろしくって打席で言いなさい」と送り出した。「(出身の)熊本はどっち方面ですか」っていうから、「ばかやろ、空見たら、つながっているよ」と。ベンチでは俺が「ランナーがみんなかえってくる。拍手する用意して」って。

 あいつ、空をみてつぶやいていたな。そして打ったんだよ。フェンス直撃の三塁打。同点になり、逆転勝ちにつなげた。野球って「運」だと思う。人と人のつながりに「運」はついてくる。関わる人が多いほど、特別な「運」になる。

 それに高校野球がいいのは、負けても褒められるところ。プロにはないドラマが生まれるよね。昔、定時制の軟式高校大会を番組で取り上げた。9人しかいないチームの1人が骨折しちゃった。「もういいよ」って周りが言っても、首を縦に振らない。仲間に抱えられ、ケンケンしながら二塁の守備位置について。相手もそこには打ってこないんだな。試合は負けて、その子は救急車。みんなが拍手して見送った。泣けたね。

 高校野球はあの泥臭いところが良くて、あれやっちゃいけない、これやっちゃいけないとみんな思いがち。はみ出す勇気が欲しいね。みんな甲子園の砂を持ち帰るでしょ。誰かが最初にやった。1人の選手の勇気。それをとがめなかった大人も立派だよね。ただね、ずっとあれをマネしているのは悲しいよ。新しい物語、生まれてこないかな。(構成・有田憲一)

     ◇

 はぎもと・きんいち 1941年、東京都出身。76歳。60年に浅草東洋劇場に入り、66年に坂上二郎さんとコント55号を結成し、人気者に。「欽ちゃんのドンとやってみよう!」など人気番組を数多く手がけた。野球ファンで、2005年にクラブチーム「茨城ゴールデンゴールズ」を立ち上げ、初代監督を務めた。現在、駒沢大学仏教学部に通う現役大学生。