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投手戦、好捕で流れつかんだ双葉「観客が味方に感じた」

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 ■みちのく白球譜(第76回全国選手権大会・2回戦 双葉1―0市和歌山商)

 東京電力福島第一原発がある福島県双葉町。原発事故の後、全町避難が続く同町の双葉は昨春、休校を余儀なくされた。

 地域の強豪校として知られた双葉が震災前、最後に甲子園の土を踏んだのは1994年の夏だった。

 初戦の2回戦。双葉の田中貴章(3年)と、市和歌山商の小谷直稔(同)の投げ合いで、スコアボードに0が並んだ。

 八回裏、市和歌山商の先頭打者の打球は左中間へ。左打者特有の軌跡を描き、左翼方向へどんどん切れていく。中堅手の加藤雄二(同)が必死に追い、飛びつきながら目いっぱい伸ばしたグラブに白球が納まった。

 白い歯を見せて立ち上がった加藤を大歓声が包み込んだ。捕手の遠藤拓郎(同)は鳥肌が立った。「観衆が味方になったように感じた」

 次打者の強い打球も、三塁手の山田茂男(2年)が横っ飛びで捕球し、アウトに。流れを双葉へ大きく引き寄せた。

 九回表。先頭は好プレーをしたばかりの加藤。セーフティーバントで出塁し、後続の犠打で2死三塁の好機をつかんだ。

 相原登司輔監督はここまで2三振と振るわない4番の遠藤に勝負を託した。「ホームランを狙ってこい」

 このひと言で開き直った遠藤が直球を振り抜くと、打球は投手の足元へ。「打った瞬間に、右手を上げて喜んでいたかもしれない」と遠藤は笑う。中前への先制適時打となった。

 ところが、最終回。マウンドの田中が先頭打者へ初球を投げた直後に右足を引きずった。七回の打席で一塁へ走った際に痛めていた。右足をかばい、手投げの状態になった。

 福島大会から1人で投げ抜いてきた田中を信じ、相原監督は続投を決断。ストライクをとる度に、観客から歓声が上がった。田中はこの回を三者凡退に抑え、双葉が勝利をつかんだ。

 遠藤らは2015年、OBチームを結成。マスターズ甲子園出場をめざし、練習に励んでいる。

 「甲子園出場が決まって盛り上がった当時の町の光景を覚えている」と遠藤。「夏の大会で双葉のユニホームが見られないのは悲しいが、だからこそ自分たちがマスターズで頑張るモチベーションになっている」

 双葉のユニホームが再び甲子園で躍動する日を夢見て、球を追い続けている。=敬称略(飯沼優仁)