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裏方から支えた主将 泣くもんか 愛知啓成・松井慎之助君

2010年07月31日

 6回、愛知啓成。無得点に抑えられていたチームは、連続安打に勢いづいていた。2死二、三塁から鋭い当たりが中前に抜ける。三塁コーチスボックスの松井慎之助君(3年)は、二塁走者に向かって右腕を力いっぱい回した。本塁に飛び込んだ走者の判定はセーフ。松井君に笑顔がはじけた。額の汗をぬぐった左腕には20針もの傷跡があった。

写真三塁コーチとして、打者に声をかける愛知啓成の松井慎之助君=岡崎市民、遠藤啓生撮影

 昨年秋の新チーム結成時に二塁手を勝ち取り、主将を任された。だが昨年11月の練習試合で相手選手と交錯し、左腕を複雑骨折した。「夏の大会には絶対に出る」と気持ちを切り替え、筋力トレーニングに励んだ。

 4月に復帰し、5月には初めて守備練習に参加した。復帰後初めてのノック。久しぶりの練習がうれしくて、飛び込んで捕球した瞬間、左腕に激痛が走った。また骨折していた。

 退院後、チームメートに「もう、(プレーは)できないんだ」と告げた。副キャプテンの河野清太郎君(3年)と部室の階段の下で泣いた。落ち込んだ姿を見て、岡田敬三監督は「お前の不注意じゃない。声を出すだけでいいから来い」と励ました。

 「選手じゃないけれど、みんなを甲子園に連れて行く」。裏方でチームをまとめ、盛り上げようと決めた。打撃練習でトスを投げ、ノックを打った。今大会は背番号5を背負ってベンチ入りをした。

 中京大中京の継投したエースに1安打に抑えられ、迎えた最終回。円陣の中で「あれだけ振り込んできたじゃないか。執念と意地を見せろ」と声を張り上げた。

 だが願いは届かなかった。泣き崩れるチームメートを整列させると、最後の打者が打席に置き忘れたバットを拾って戻った。涙は最後まで見せなかった。

 「悔しいです。でも主将の僕が泣くわけにはいかないから」。球場に一瞬、降り注いだ雨が彼のほおをぬらしていた。(工藤隆治)


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