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〈福島・僕たちのバイブル2〉「壁」破った21番目の選手

2010年07月03日

■話し、悩み聞き輪の中へ

写真練習後、保護者からの差し入れのパンを部員たちに配る福島商の伊藤美紀マネジャー

 「お疲れさまー、1年生にも分けてあげてね」。練習が終わり、真っ暗になったグラウンド脇の物置小屋の前で、福島商の女子マネジャー伊藤美紀(3年)は、その日保護者から差し入れられたパンを部員たちに配っていた。

 「ありがとう」「おれはあんパンよりごまパンの方が好きだな」。ケースから次々となくなるパンと部員たちを見ながら、笑顔を振りまく。「マネジャーの仕事は大変だけど、みんなを支えられる、頼られる存在になりたい」

 仕事は多忙だ。放課後、まずは体育館脇の水道で、練習中に選手が飲むドリンク作りから1日が始まる。2人の1年生マネジャーと協力し、56人分のスポーツドリンクや麦茶などを15リットル入りの容器に作り、2人がかりで約50メートル離れたグラウンドまで運ぶ。練習が始まると、道具をふくため布の洗濯やノッカーにボールを渡す役などが待っている。

■接し方わからず

 やめたいこともあった。同じ学年の女子マネジャーはいない。先輩マネジャーが引退し、後輩もいなかった冬から春は1人ですべてをこなし、さみしさを感じた。当時は「部員は部員、マネジャーはマネジャー」という雰囲気で、「仕事が大変でも、部員には頼めなかった。彼らとどう接すればいいのか、分からなかった」。

 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)に出会ったのも、そんな思いの募っていた3月だった。野球部OBからプレゼントされ、遠征先の千葉にむかうバスの中で読み進めた。主人公川島みなみが、ドラッカーのマネジメント理論を使って、練習方法や部内の雰囲気を変えてゆく姿に、圧倒された。同時に自分とのギャップも感じたという。

 だが、みなみが不満や悩みを抱える部員たちの気持ちを聞き出そうと、病気で入院していたもう1人の女子マネジャーにその役目を頼んだシーンにさしかかり、手が止まった。さりげないお見舞いの会話から聞き出した情報を、その後の仕事に生かしていく。「部員たちが何を悩んでいるのか、私は考えたことがあっただろうか」

 遠征中に一気に約270ページを読み終えた時、「私も、もっと一人一人と会話をし、悩みを聞いていこう」と心を決めた。早速、遠征先の宿舎で食事中に自分の方から話しかけてみた。すると、これまで一歩引いた感じだった部員たちが積極的に声をかけてくれた。普段の教室でも部員たちの輪に加わり、試合の結果なども気軽に話せるようになった。

■劇的展開で一体感

 6月にうれしいことがあった。県北選手権。非公式戦だが、県内で常勝中の聖光学院に6―5で勝った。先制されたものの2度逆転した劇的な展開。記録員としてベンチに入った伊東は選手たちと一緒になって、最前列で応援した。主戦の菅藤亮一が最後の打者を三振に抑えると、涙があふれ出た。「今までにない部員たちとの一体感を感じた」

 「もしドラ」は「今までとは違うマネジャー像を見せて、自分を変えてくれた。今は生活が充実している。あの感動をもう一度味わわせて欲しい」と伊東。ユニホームを着ない21人目の「選手」として、夏を心待ちにしている。


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