コズフィッシュ

祖父江慎さん率いるコズフィッシュは、年間数十本の仕事を同時進行させる超多忙なデザイン事務所です。 まるで乱丁本のような『伝染るんです。』など、常識破りで印刷会社泣かせともいわれる装丁が有名です。事務所は入口から作業場に至るまでほとんどが本棚。夏目漱石の『坊ちゃん』をはじめとする古書コレクションや資料が整然と並んでいます。奇抜かつ卓越したデザインの発想と実現力は、本作りの歴史や印刷工程に対する深い知識と愛情に裏打ちされています。祖父江さんはブックデザインについて、「本の内容にふさわしいカタチを見つけて、巫女さんのように降ろしてあげること」と例えたりします。
今回「降ろして」いただくご相談をしたのは、展覧会の図録。18世紀後半、思想家でデザイナーのウィリアム・モリスがリードし、日々の暮らしに美意識を持ち込んだデザイン運動を大々的に紹介する「アーツ&クラフツ展」です。家具、食器、デザインなど、今日の暮らしに脈々と受け継がれるアーツ&クラフツの精神を、21世紀の日本でいかに伝えていくか。祖父江さんの力を借りられないかと、お電話をしてみました。

編集 どうもごぶさたしております。お元気ですか。実は今回、ぜひ祖父江さんに作っていただきたい本がありましてお電話差し上げたのですが、お忙しいでしょうか?

祖父江 ええ…まあ…。あの、いつまでに作らなくちゃいけない本ですか?

編 9月の半ばなんです。ですので、8月いっぱいで校了、というところで。

祖 ん。ちょうどぎりぎり、というところですね。

編 はい、そう、ちょうどいいタイミングなんですね、始めるのには。

祖 …で、どんな内容の?

編 「アーツ&クラフツ展」という展覧会の図録なんです。ウィリアム・モリスとかに始まって、世界のアーツ&クラフツをいっぺんに紹介する展覧会です。

祖 …へえ。

編 すごく面白いですよ。世紀末のウィーンとかのヨーロッパがあったり、日本は民芸が入ってきまして。こういう展覧会の図録ですから、アーツ&クラフツって何を残したんだろう、21世紀のアーツ&クラフツって何だろう、とか、そういうことを考えたり、表現したり、そうしたあたりをぜひとも、ぜひとも祖父江さんと一緒させていただいて、残したいと思いまして。すみません、お忙しいとは思うのですが、正直、どんなもんでしょうか。

祖 ええ、ハイ…。大丈夫、かも、ハイ。

編 あ、そうですか、ありがとうございます。そうしましたら、一度、展覧会の内容と、こちらで希望している思いをご相談に上がりたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。


こうして初回の打ち合わせが決定したが、依然、引き受けてもらえるのかはまだわからない。打ち合わせでは、なぜお願いをしたいのか、何を期待しているのか、きちんと伝えなければ。

コズフィッシュが手掛ける「アーツ&クラフツ展」の図録作りの過程を、ドキュメント型式で随時紹介します。21世紀のアーツ&クラフツを意識した「美しい本」作りにご期待下さい。

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