
閑静な住宅地にある自宅兼事務所にお邪魔した。
入口の赤い車が愛らしい。祖父江さんと安藤さん、こんにちは。
「引っ越したんです。これ、ご案内のはがき。作ったんですけどね」と祖父江さん。おびただしい数の段ボールを、引っ越し屋さんが900まで数えてあきらめたほど、荷物が多くて大変だったそう。「はがきを出す時間がなかったから、来てくれた人に配ってるんです!」
本題に。まずは本の内容についてイメージを持ってもらうため、展覧会のテーマといま開催する意義を説明し、300点近い出品作品を見てもらう。
変わった家具や器が出てくるたびに「あ、これなに?」「なにに使うもの?」「わかった!」とついはしゃいでしまう祖父江さん。対照的に安藤さんは、じいっと何やら考え込んでいる。クライマックスの一つ、ウィリアム・モリスの作品群を見る。アーツ&クラフツ運動を先導した重要な作家だ。祖父江さんに、モリスのことを聞いてみた。
「こういう模様は描けないんです。模様って、やっていくと算数になっちゃう。左右がそろったり、規則性が出たり。すると、とたんに面白くなくなっちゃう。それが、なかなか、できない」
「モリスが描く植物の枝はね、左右対称に見えるけど、実は枝の重なり方を逆にしたり、微妙に一枚だけ葉っぱの先を違う方を向けたりしてる。ちょっとすごいことなんですよ」
「生命力がなくなると、死の世界にいっちゃう。安定は、死。黄金律も美しいけど、死んだ世界のもの。だから本の場合、黄金律ではなく、天地のサイズを少し変えてあげて、こっちの世界に戻してあげるんですね〜!」
あっという間に生死の淵まで展開したデザイン論。けれども、モリスの模様が人気なのは、気づかないけれども、こうした隠れた生命感なのかも。
「もっとすごいのがあるよ、みてみて」
脱線した祖父江さんが、最近ハマったという大判の本を持ってきた。18世紀のフランス宮廷で使用された、超細密な生地の模様を集めた図版。
「あの、祖父江さん。このお仕事、お引き受けいただけるんでしたっけ?」
「あ、お返事してなかった!はい、よろしくお願いします!でね、ほらっ、これも見て。すごいでしょう。ずっとこんなことやってたらおかしくなっちゃうよね。すごい人がいるなあ。ねっ」


