模様をめぐってすっかり脱線した前回の打ち合わせ。最後に編集サイドがイメージする本の姿や形、大切にしたいところをお伝えした。あったかいが、やぼったくない手作り感、文字が読みやすいことなど、自由に形を「降ろして」もらうために、できるだけ抽象的に。次回の打ち合わせでは、まず本のクライマックスとなる、作品写真を収めるページについて、レイアウト案を作ってもらうことに。そのほか本の設計図である造本プラン、レイアウトの下準備、印刷の方向付けについてもあわせて相談することにした。
打ち合わせ当日。駅から事務所へ向かう途中、自転車に乗った祖父江さんとすれ違う。「あ、ちょっと、タバコを買いに」。といったきり長いこと帰ってこなかった。印刷会社からも、営業の方、データ制作の担当、色調を調整するプリンティング・ディレクター、あわせて5人が登場。祖父江さんが帰宅。徹夜明けのせいだろうか、頭に冷えピタを貼り付けた安藤さんが、プリントされた図版ページを前に、コンセプトを控えめに語りはじめる。
「ページの余白は、やはり、モリスを意識しています」
ウィリアム・モリスは晩年出版業に熱中した。生み出された美しい本「ケルムスコット・プレス」では、ノド、天、左右、地の余白を1:2:3:4の割合で空けてみせ、そのルールは後のブックデザインに大きな影響を与えた。
「けれども図録でそこまで余白をとってしまうと、せっかくの写真が小さくなってしまうので、ここでは1.1:1.2:1.3:1.4の割合にしてみました」


レイアウト


この余白をベースに、タイトルなどの文字情報が、ページを額縁のように区切り、整然とした印象を与える。キャプションは写真の近くにちょこんと置かれる場合が多いので、かなり斬新な印象だ。その十倍くらい異彩を放っていたのが、写真の脇で、まるで煙のようにうねうねと曲がる文字の固まり。400字程度の解説文が「うねうね」していては、読みづらくないだろうか。(読みづらい)。解説を書いた筆者は納得するだろうか。(厳しいなあ)。自問自答を繰り返しつつ、安藤さんに「うねうね」の意図を聞いてみる。
「ああ、そこがキモなんです」。安藤さんの目が光った。「この本は、割と整然と、ある意味工業的な感じを基本としていくんですね。そこ入り込む余地を作るために、あえてここに崩しをつけてるんです。たとえばモリスが模様をつくったときに、枝の先を不規則に曲げて、ちょとした崩しを入れていますよね。そこを意識してみました。これがないと、単に工業的な、固いだけの感じになってしまうためなんです」

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